『日本三國』とは?作品に散りばめられた歴史と面白さ
弁舌と知略で乱世を渡る『日本三國』は、三国志を下敷きに令和後の日本を描く戦記漫画・アニメ。あらすじや登場人物、実在の地名、平家物語や蝦夷など作中に潜む日本史のモチーフまで、作品をより深く楽しむための見どころを紹介します。
弁舌と策略で世を変えることを志す青年が主役を担う『日本三國』は、現代の日本が衰退した近未来を舞台にした戦記漫画・アニメです。
下敷きになっているのは、日本でも昔から人気の高い中国の『三国志』。そこに今の私たちが知っている日本の要素や、古代日本の歴史を取り入れています。知らなくても楽しめますが、三国志や日本史を少し知っているだけでも作品の深みが増すはず。
そんな日本三國の面白さと、どんな日本文化が垣間見えるのかについて触れていきます。
日本三國とは?

©松木いっか/小学館/日本三國製作委員会
読みは「にっぽんさんごく」、作者は松木いっか氏。小学館の漫画アプリ「マンガワン」とWebサイト「裏サンデー」で、2021年から連載が続いています。シリーズ累計発行部数は、2026年3月末時点で100万部を突破しました。2025年には舞台化、2026年4月からはスタジオカフカ制作のテレビアニメも放送中です。
メタルギアシリーズやデスストランディングシリーズを手がけた小島秀夫監督がおすすめしたこともSNS上で話題になりました。
ストーリーのあらすじ
核戦争、難民の流入、感染症の大流行、巨大地震、そして民衆の革命により、日本は令和で衰退しました。これらが連鎖して国家そのものが消え、人口は10分の1以下に減り、文明レベルは明治初期、つまり19世紀後半まで巻き戻ってしまいます。
やがて日本は、大和・武凰・聖夷という三つの国に分かれ、覇権を争うようになりました。主人公は三角青輝。地方の役人にすぎなかった彼が、ある別れをきっかけに、分断された日本を再び一つにまとめることを志します。武器は知識と弁舌だけ。後に「奇才軍師」と呼ばれる男が、どう乱世を渡っていくのか。物語はそこを描いていきます。
キャラクター紹介
物語全体に関わる主な顔ぶれを、軽く押さえておきます。
三角青輝(みすみ あおてる)
主人公。地方役人から身を起こす軍師タイプで、腕っぷしはからっきし。すべてを理屈と弁舌で切り開きます。
過去のインタビューで作者は「鄧艾(とうがい)という三国志の魏の武将がモデル」と述べています。
東町小紀(ひがしまち さき)
青輝の妻。彼女との別れが、青輝が乱世へ身を投じる転機になります。物語の出発点を作る重要な人物。
強気で真っ直ぐな性根で、主人公・青輝に大きな影響を与えています。
阿佐馬芳経(あさま よしつね)
通称「ツネちゃんさん」。青輝の同期で、武に秀でた自信家です。知略の青輝に対して、武で道を切り開くタイプ。
作者は過去のインタビューで鄧艾と対をなす鍾会(しょうかい)という武将をモデルにしたと明かしています。青輝のモデルとなった鄧艾を失脚させ陥れたのがこの鍾会です。
平殿器(たいら でんき)
物語の中心となる敵役。大和の実権を握る平家の人物で、冷酷ながら政治力は一級品の独裁者です。
龍門光英(りゅうもん みつひで)
大和の辺境将軍。文武に秀でた高潔な人物で、青輝が仕えることを目指す相手です。
賀来泰明(かく やすあき)
大和の軍師。青輝と並ぶ知略の使い手。
藤3世(ふじさんせい)
大和の皇帝。といっても実権はなく、平殿器に操られる立場にあります。臆病で気弱な、名ばかりの君主です。
日本三國における領地の地図

上の地図は物語開始時点の領地の分布。ストーリーが進むにつれて、占領している土地が移り変わっていきます。
作中には実際の地名が登場
「大和」「武凰」「聖夷」という”国”は、いまの日本には存在しません。しかし、その国を構成する土地の名前は、現代日本の地名をそのまま引き継いでいます。大和の中心は大阪、聖夷の戦場は新潟や金沢。物語の舞台は、いまも歩いて訪ねられる実在の場所なのです。
作中に出てきた実際の場所を訪れることもでき、作品のファンなら聖地巡礼旅行もおすすめですよ。
現代日本の「スラング」が頻出
「ガチ」や「わかりみが深い」などの若者言葉(スラング)が作中に頻繁に登場します。
堅苦しくシリアスな場面でも当たり前のように登場人物が口に出すので、それがシュールでなんとも言えない雰囲気に。
海外の方でも、日本語がある程度わかる方ならクスリとしてしまうはず。現代日本と地続きの未来であることを感じさせる要素の一つです。
日本三國のヒントになった「三国志」とは?

『三国志』は、いまから約1800年前の古代中国の歴史です。漢という大帝国が崩れたあと、魏・呉・蜀という三つの国が天下を争いました。実際の出来事を記録した『正史』と、それを物語として大きく脚色した小説『三国志演義』があり、『日本三國』が下敷きにしているのは後者の「演義」のほうです。
日本の漫画やゲームで人気の題材
日本では、この三国志がとても人気のある題材。
横山光輝の漫画、コーエーのゲーム『三國志』『三國無双』シリーズ、そして諸葛孔明が現代の渋谷によみがえる『パリピ孔明』などの作品が何度も作られてきました。特にこの軍師・諸葛孔明は、天才の代名詞として広く知られています。
日本史を知っているともっと面白い
登場人物の名前には、日本の歴史に実在した有名な武将や人物が下敷きになっています。もちろん、本人ではないので同姓同名ではありません。ただ、その血筋や立ち位置を思わせる作りになっていて、元ネタに気づくとニヤリとできます。
以下はあくまで”考察”になりますが、実際の日本の歴史との関わりを思わせる部分です。
平家物語と源平合戦のような構図
敵役は「平殿器」、その一族は「平家」。一方、青輝の同期は「阿佐馬芳経(よしつね)」。
栄華を誇った平家と、それを討たんとする義経。約800年前、源氏と平家が争った源平合戦と、その顛末を描いた古典『平家物語』を彷彿とさせます。
帝である「藤」の名前もどことなく藤原氏を連想させるもので、この辺りの構図はおそらく意図的なものでしょう。
ヤマト朝廷と蝦夷、アテルイ
北の国「聖夷」に含まれる漢字「夷」は、古代の日本で東北に暮らし、ヤマト朝廷に抵抗した「蝦夷(えみし)」を指す言葉でした。
聖夷には九羅亜輝威(くら あてるい)というキャラクターがいます。アテルイは、まさにそのヤマト朝廷と戦った蝦夷の英雄として歴史に残る実在の人物。西の大国「大和(ヤマト)」と北の「聖夷」の対立に、古代日本の歴史を感じます。
謀で知られる毛利家
連載中の漫画では「毛利家」が登場し、知略にたけた一族として描かれます。戦国時代に中国地方を治めた毛利元就は、調略と謀で勢力を広げたことで有名。その名を背負わせている時点で、役どころの見当がついてしまうのも一興です。
まとめ
『日本三國』は、主人公の三角青輝による弁舌や各勢力の思惑、張り巡らされた策略が見どころの作品です。
そして、三国志という中国由来の歴史を軸にして、今まで日本が積み重ねてきた歴史や文化まで描かれているのも興味深い点。現代日本で若者が使うスラングが自然に出てくるのも「令和を機に衰退した日本」だからこそできる演出で、今までにない新しさを感じます。
また、原作漫画の独特なタッチを見事にアニメ化しているのも素晴らしいです。原作漫画は今も連載中で、アニメで描かれているストーリーはこれからどんどん面白くなっていくので、今後の展開には大いに期待していただきたいです。
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公開日 最終更新日
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