阿良川魁生が披露した『稽古屋』とは?『あかね噺』実力派の若手が魅せた古典落語
『あかね噺』のアニメ2話において、阿良川一生の弟子・阿良川魁生が『稽古屋』を披露しました。若手の実力派と呼ばれ、「色気」が強みである魁生の初登場シーンでこの演目が選ばれた理由を、噺の構成や特徴から解説します。
週刊少年ジャンプで2022年から連載している、原作・末永裕樹、作画・馬上鷹将の漫画『あかね噺』。
アニメ第二話において、阿良川一門のトップである一生の弟子・魁生が披露した『稽古屋』の面白さ、この演目が難しいとされる理由を解説します。
+αのスキルが求められる古典落語『稽古屋』
歌舞音曲の芸事を教える「稽古屋」に通う男を主人公とした話で、落語に音曲(日本の近代以前の音楽)の要素が多く入った演目です。同じ演題で内容やサゲが異なる話が存在します。
パターン1・稽古シーンが印象的な演目
作中で魁生が披露したのはこのパターンです。
当時、武家に奉公するために町人の娘が通うことが多かった芸事の稽古。しかし、この噺の主人公である男は「モテたい」という理由で通い始めます。
もちろん、生半可な気持ちでは技術も身に付きません。自分の稽古を待っている間もまじめに聞く姿勢がなく、「踊りと歌、どちらがやりたいのか」と聞かれて「色事のできるやつ」と答え、先生から「色は指南(思案)の外なので教えられない」と断られるという噺です。
稽古の場面で下座音楽と呼ばれる歌舞伎の効果音(舞台袖で演奏される三味線や太鼓などの伴奏)が多く使われます。
パターン2・「歌火事」の別題でも知られる噺
このパターンの主人公は、帰宅してからも家の屋根に登って熱心に歌の練習をしていました。
ある風の強い夜、男が「焼けたつ……」と大声で歌ったところ、通りがかった人が火事だと勘違いし、「火事はどこですか」と尋ねます。男が「海山超えて」と続きを歌うと、通行人が「(火事の現場が)そんなに遠ければ安心」というのがこの噺のサゲ(落ち)です。
「歌火事」の題名でも知られています。
パターン3・多彩な音楽ジャンルが登場
三味線で奏でる音楽の稽古に通っている男が「喜撰」という演目を教えてもらうものの、覚えられずに途中から大衆的な大道芸の曲になってしまう。次に「権上」という曲を習って歌うと民謡になってしまう、という噺です。
これといったサゲ(落ち)がなく、音曲が多く使われるのが特徴です。
『稽古屋』の見どころ・面白さ
1は稽古の場面で登場する音曲が見どころ。唄を教える先生の艶やかな姿、音曲の技術を見せたうえで、生徒である男の下手で拙い唄を聞かせ、落差で笑いを生みます。
2のパターンは、熱心に練習する男と通行人のすれ違いによって生まれるおかしさが要。通行人が思わず足を止めて「火事はどこですか」と聞いてしまうほどの大声で歌う様子や、勘違いが解消されないまま解決する様子は、現代でいうコントのような面白みがあります。
パターン3はより音曲に寄った内容です。歌舞伎のBGMや長唄といった、現代でいうクラシック音楽を習っているはずが、大道芸や民謡というポップスに変わってしまうのが面白さ。「新しく覚えた曲を口ずさんでいるうちに別の曲になってしまった……」なんて経験がある方なら、共感しながら笑えるはずです。
『稽古屋』を見比べる
作中で魁生が披露した『稽古屋』です。
桂文三による一席です。稽古の内容が歌ではなく踊り中心の『稽古屋』を見ることができます。
公開日 最終更新日
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