『あかね噺』朱音が初めて披露した落語『まんじゅうこわい』の見どころを解説

落語『まんじゅうこわい』は、アニメ『あかね噺』で朱音が初めて高座にかけた一席。前座噺のあらすじから、噺家ごとに変わる見どころ、有名なサゲ「ここらで一杯、熱いお茶が怖い」まで紹介します。

約4分
『あかね噺』朱音が初めて披露した落語『まんじゅうこわい』の見どころを解説

週刊少年ジャンプで2022年から連載している、原作・末永裕樹、作画・馬上鷹将の漫画『あかね噺』。

アニメ第二話では、主人公・朱音が初めて高座に上がりました。父の師匠・阿良川志ぐまのもとで6年間修業をしていた朱音が前座代演を務め、プロの世界に触れる重要な物語です。

朱音が披露したのは、現実の落語界でも若手の鍛錬として演じられることの多い『まんじゅうこわい』。前座で演じるのにふさわしい噺であり、朱音が志ぐまから指導を受けた演目でもあります。

日本人にはおなじみの噺

Cup of green tea on a wooden table

日本茶 『まんじゅうこわい』のサゲ「ここらで一杯、熱いお茶が怖い」は、落語を聞かない人でも知っているほど有名です。

この噺のオチとなる「ここらで一杯、熱いお茶が怖い」は落語を聞かない人でも知っているほど有名な古典の演目です。

好きなものをあえて嫌いと言い、自分に嫌がらせしようとする相手に一杯食わせつつ好きなものを手に入れるというストーリーで、子供向けの絵本などにもなっています。

1768年に日本で翻訳・出版された中国の笑話集『笑府』に収録された話が元だと考えられますが、似た話は中国の随筆や日本の小噺集にも登場しています。

若手が鍛錬として演じる「前座噺」とは

落語には「前座」「二ツ目」「真打」という階級があり、前座は雑用などをしながら経験を積む修業期間。出演時間が短いため、当然演目も短いものになります。また、前座は師匠のもとで「前座噺」を徹底的に稽古し、座り方、声の出し方や扇子・手ぬぐいの扱いといった基礎を身に着けます。

前座噺の特徴は、構成がシンプルで話も分かりやすいこと。複雑な人間関係はなく、日常の出来事や誰もが共感できる失敗談などが中心です。落語を初めて見る・詳しくない観客にとっても、親しみやすい物語と言えます。

前座がどの前座噺を稽古するかは、師匠や一門によって異なります。主な前座噺として、『まんじゅうこわい』、子供にものすごく長い名前を付ける『寿限無』、日本の有名な昔話を落語風にした『桃太郎』、親子の掛け合いがユニークな『初天神』などがあります。

『まんじゅうこわい』のストーリーを解説

この物語は非常にシンプルで、青年たちが集まって「怖いもの」を発表しあうという筋書きです。「怖いもの」は噺家や地域によって毛虫、蛇、百足など様々。どんなところが怖いか、どう怖いかにも多彩なパターンがあるほか、昆虫や動物を身振りで表現することも多く、腕の見せ所と言えます。

「怖いものなんてない」

そんな中、一人の男が「いい若者が情けない。この俺様には怖いものなんてない」と言いだします。周囲は「あれはどうだ」「さすがにこれは怖いだろう」と、嫌われものの虫や動物を挙げますが、男は「そんなものは食べちまうよ」と動じません。

周囲が男の態度に腹を立て始めると、男が思い出したように「怖いものがあった」と言い出します。

男が恐れるもの

その怖いものとは、なんと「饅頭」。小麦粉などを練って作った生地であんこを包み、蒸して作る甘いお菓子の何が怖いのかと周囲は不思議がりますが、男は「考えるだけで怖い、話しているだけで気分が悪くなった」と震え、布団にもぐってしまいます。

散々馬鹿にされた青年たちは、饅頭に怯えて体調を崩した男を怖がらせてやろうと、男が寝ているうちに饅頭を買いに行きます。栗が入った饅頭や葛で作った饅頭、中華風、果ては豆大福まで、たくさんの饅頭を男の枕元に山積みにし、万が一男が死んでしまったらまずいと医者も呼びました。

さて、青年たちがこの意趣返しの結果を見に行くと、目を覚ました男は「こんな怖いものは食べてなくしてしまおう」「美味すぎて怖い」と言いながら饅頭を次々に食べていました。当然青年たちは怒り、「お前の本当に怖いものは何だ!」と問い詰めます。

すると男が落ち着き払って「ここらで一杯熱いお茶が怖い」と答え、この噺のサゲ(落ち)となります。

Three light brown manju on a wooden plate, one cut open to reveal a dark red bean paste filling.

まんじゅう

『まんじゅうこわい』の見どころ

シンプルゆえに、演じ手の技量や解釈の違いがよく見える演目です。

例えば、青年たちが怖いものを言い合うシーンで観客が恐怖と嫌悪感に共感できるかは噺家の表現力にかかっています。また、「饅頭が怖い」という男の表情や声音がリアルであればあるほど、青年たちが「ちょっと懲らしめてやろう」と饅頭を買いに行く、という行動にも説得力が生まれます。

そして、男がまんじゅうを食べるシーンは、怖がっている風を装いながら次々に食べていくのか、「怖い」と言いつつにこにこしながら食べているのかで、観客が受ける印象も大きく変わります。

冒頭では、青年たちの雑談の様子を楽しみ、後半は男の機転とユーモアを楽しむことができます。

落語家の一席を見る

様々な『まんじゅうこわい』の一席の中から、公式チャンネルで見られるものをいくつかご紹介します。

YouTubeなら自動翻訳機能で英語字幕をつけることもできますよ。

アニメ『あかね噺』より

『あかね噺』で朱音が初めて高座に上がったシーンです。

三遊亭王楽の一席

三遊亭王楽(現・7代目三遊亭円楽)による一席です。師匠は日本の有名な演芸バラエティ番組『笑点』で最も長く司会者を務めていた5代目三遊亭圓楽。王楽は彼の最後の弟子です。

立川談志の一席

こちらは立川談志の一席。時事ネタを盛り込んだマクラ(本編前のフリートーク)など、個性が光ります。三遊亭王楽と見比べると、噺家ごとの違いがよくわかります。

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FAQ

怖いものを聞かれた男が「饅頭が怖い」と嘘をつき、青年たちが懲らしめようと饅頭を買い与えたところ、男が美味そうに食べてしまうという滑稽噺です。最後に「ここらで一杯、熱いお茶が怖い」とサゲて締めくくられます。
落語界の修業期間にあたる「前座」が稽古する、構成がシンプルで分かりやすい噺のことです。『まんじゅうこわい』のほか、『寿限無』『桃太郎』『初天神』などが代表的な前座噺として知られています。
饅頭を平らげた男が「本当に怖いものは何だ」と問い詰められ、「ここらで一杯、熱いお茶が怖い」と答えるのがサゲです。「怖い」と言いながら欲しいものを手に入れる、見事な言葉遊びになっています。

公開日 最終更新日

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