Toutoi
意味
尊い(とうとい)は、心を奪われた相手に、思わず拝みたくなるほど素晴らしいという気持ちを表すオタク・ファンの言葉。対象はさまざま。アニメや漫画のキャラクター、その二人の関係性、実在のアイドルや声優にも使う。胸がいっぱいになって、ただ好きと言うだけでは足りないときに口をつく。
ただ好きという感情より一段深く、信仰心に近い響きを持つのが特徴。愛おしさが極まると、もう相手を神様や仏様のように感じ、手を合わせたくなる。だからこそ、軽い称賛よりも強い熱量がこもる。場面によっては、ただ最高だと伝えたいだけのときにも気軽に使われる。
もとは神仏や人の命、気高い生き方に向ける格式の高い言葉である。それをファンが推しへの感情に当てはめたところに、この語の面白さがある。古い敬いの言葉が、現代のオタクの語彙としてよみがえった形。
語源
尊いは古くからある形容詞で、神仏や人の命といった、崇め敬うべきものに向けて使われてきた。古語では「たふとし」といい、鎌倉時代の随筆『徒然草』にもこの語が見える。万葉集には、大伴旅人が酒をこのうえなく尊いものとして詠んだ歌も残る。
オタク用語としての広まり
この古い言葉を、ファンが推しへの気持ちに当てはめ始めたのは2010年代に入ってから。ネットメディアのねとらぼが2015年にまとめた記事によれば、2012年ごろからオタクのあいだで散発的に見られたという。それが2013年に女性ファンを中心に広まり、2014年にはかなり一般的な表現になった。
言い出した人や場所は、はっきりしていない。一説では2007年、ある大学のmixiコミュニティでの書き込みが早い例とされる。2011年には、2ちゃんねるでこの使い方を広めようというスレッドも立った。ただしどれも確かな起源ではなく、いくつもの場所で自然に育った言葉と見るのが近い。
最初に根づいたのは、漫画やアニメのキャラクター、その二人の関係性を愛でる女性ファンのあいだだった。そこからアイドルや声優など、実在する人を応援する場へも広がっていく。今では性別やジャンルを問わず、推しを語るときの定番になっている。
用例
- 1 推しの新しい衣装、見た? もう尊い……語彙力なくなる。
- 2 A「このアニメ、二人の関係性がとにかく尊いんだよ」B「わかる。あの距離感、ずっと見ていたい」
- 3 ライブのあのMC、尊すぎて泣いた。一生忘れない。
- 4 推しと推しが並んで写ってるだけで尊い。理由なんていらない。
補足
尊いから生まれた言葉
尊いからは、いくつもの派生表現が生まれている。気持ちを名詞にした「尊み(とうとみ)」や「尊さ」は、感情の量をはかるように使う。「尊みが深い」と形を変えても通じる。
感情が振り切れた状態をあらわすのが「尊死(とうとし)」。尊さのあまり天に召されそうだという、半ば冗談めいた言い方だ。卒業式で歌う「仰げば尊し」をもじった「仰げば尊死」という言葉遊びもある。
近年は「てぇてぇ」という崩した形も広まった。尊いがなまったもので、とくにVTuberを応援する場でよく飛び交う。配信中に二人の仲のよさが伝わると、コメント欄が「てぇてぇ」で埋まる。SNS流行語大賞2023では、その年の候補30語のひとつにも選ばれた。
新語として辞書に注目された
俗な言い回しでありながら、尊いは辞書の業界からも注目を集めた。三省堂が毎年えらぶ「辞書を編む人が選ぶ 今年の新語2018」で、尊いは4位に入っている。選評はおもしろい指摘をしている。推しを大切に思う気持ちは、古典で愛する人を「あが仏」、つまり自分の仏様と呼んだ感覚に通じるという。神仏への敬いから始まった言葉が、形を変えて同じ気持ちを受け継いでいるという見立てだ。
2020年のギャル流行語大賞でも6位に挙がった。アイドルファンを入り口に、世代を問わず知られる言葉になっている。なお、年末に話題になるユーキャン新語・流行語大賞とは別の企画なので、ときどき混同される。
海外のファンも「toutoi」
この言葉は、日本語のまま海外のアニメ・アイドルファンにも届いている。英語圏では toutoi とローマ字で書かれ、precious と訳されることが多い。推しが尊いと記したグッズが、海外の通販サイトに並ぶこともある。ただし、すでに英語になじんだ kawaii や oshi ほど浸透しているとは言いがたく、ファンのあいだで通じる言葉という段階にある。
最終更新日
Japanese
尊い
Hiragana
とうとい
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