Moe

意味

萌え(もえ)とは、漫画やアニメやゲームなどのキャラクターに強く惹かれ、高ぶった愛着を抱く気持ちを指す俗語。アイドルなど実在の人物に向けても使う。確かな定義はなく、相手を好きだと思う気持ちをまるごと言い表す。かわいい、いとおしい、目が離せない。そうした胸が動く瞬間をひとことに畳み込んだ言葉だと考えるとわかりやすい。

もとは動詞の萌えるの語幹で、萌えるは草木が芽吹くことを意味する。俗語としては名詞にも感動詞にもなる。

特徴的なのが属性と組み合わせる使い方である。眼鏡をかけたキャラに惹かれる気持ちは眼鏡萌え、素っ気なさと甘えが同居するツンデレへの好意はツンデレ萌え。妹や猫耳やメイドといった、心をくすぐる要素そのものは萌え属性や萌え要素と呼ばれる。何に萌えるかは人それぞれで、その組み合わせの数だけ萌えの形がある。

語源

語源には決定的な定説がない。有力とされるのが、草木が芽を出す萌えるからの転用説。芽がふくらむように、好意が心の中で育っていくという見立て。

もう一つ、感情が燃え上がる燃えるからの転化説もある。これは萌えると燃えるは同じ読みで、パソコンの変換ミスから広まったとする解釈。

どちらも語感は腑に落ちるが、裏づけとなる一次資料は見つかっていない。

キャラクターの名前が起源という説

特定のキャラクター名を起源とする説も複数ある。よく知られるのが恐竜惑星説だ。NHK教育テレビの子供向け番組枠で1993年に放送されたSFアニメ『恐竜惑星』のヒロイン・萌が由来だとするもので、おたく評論家の岡田斗司夫が広めた。ただしこの紹介には誤りが混じる。岡田はヒロインの名を実在の作家である鷺沢萌と取り違えており、作中のヒロインに名字はない。しかも制作に関わった金子隆一は、萌えの言い回しは作品より前からあったとして、この説自体を否定している。

ほかに、精神科医の斎藤環が友人から聞いた話として紹介した土萠ほたる説もある。1994年放送の『美少女戦士セーラームーンS』に登場する土萠ほたるを由来とするものだ。どちらの説も実証されたわけではなく、起源は一つに絞り込めない。

ネットからアキバ系へ

ネット上の初出も、はっきりとはたどれない。インターネット初期の電子掲示板には、1988年に萌えたぎりますと書き込まれた例が残るが、後に続いていない。1994年には女性声優への萌えが確認され、1995年には二次元の美少女への萌えが急に増えた。1990年前後にオタクのあいだで自然に広まったと推測されている。

「萌え」の一般化

世間に出たのは2000年代半ば。2004年、匿名掲示板の書き込みから生まれた恋物語『電車男』がヒットし、秋葉原を中心とするアキバ系文化に世間の目が向く。

2005年のユーキャン新語・流行語大賞では、秋葉原のメイドカフェ@ほぉ〜むカフェのメイドユニット、完全メイド宣言による萌え〜がトップテンに入った。大賞ではないものの、萌えがオタクの外まで届いたことを示す出来事だった。2018年には、日本を代表する国語辞典の広辞苑にも第7版で初めて載る。用法が定着し、社会に浸透したことが理由とされた。

用例

  • 1 「新キャラ、眼鏡かけてるの見た?」「見た見た、まじで眼鏡萌え。もう好き」
  • 2 袖から指先だけのぞく萌え袖の子が、カップを両手で包んで温まっていた。
  • 3 推し活まっさかりの後輩に、萌え〜って懐かしいねと言われて、少し世代を感じた。
  • 4 「この娘のどこに萌えるの」「その、ちょっと不器用なところ全部」

補足

萌えから枝分かれした言葉

萌えは多くの言葉を生んだ。かわいさを体現するキャラは萌えキャラ、大きな瞳などでかわいらしさを強調した絵柄は萌え絵と呼ばれる。

袖口から手を出さずに握り込む着方は萌え袖。地域の名産に美少女キャラを添えて売り出す試みは萌えおこしと呼ばれ、米袋にキャラを描いた萌え米などが生まれた。

少し毛色が違うのが萌え断だ。2016年ごろからSNSで広まった言葉で、切ったサンドイッチの断面が色鮮やかで美しいことを指す。キャラへの感情ではなく見た目の美しさへ意味がずれた、原義とは別の使い方である。

推しと尊いの時代のなかで

2010年代に入ると、萌えは会話の中心から少しずつ退いていった。昨今は古い言葉として扱われることも増える。かわりに前へ出たのが推しや尊いだ。応援する対象を推し、心が満たされる感動を尊いと言うほうが、いまはなじみ深い。

2020年代においてはめっきり触れることが減ってしまった萌えだが、先述の「萌え絵」や「萌え袖」はそれ自体がジャンルとして確立されており、今でも目にする機会があるだろう。

海外に渡った moe

萌えは海外へも渡り、英語圏では moe とローマ字のまま定着した。人気アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の各国語版で、萌えのせりふがそのまま MOE と訳された例もある。

中国語圏でも萌の字を使った表現が広まった。ただし意味には少しずれが生じている。日本ではキャラへ向ける感情の言葉だった萌えが、英語圏では moe anime のように作風やジャンルを指す言葉へ育った。日常を穏やかに描く作品などがそう呼ばれる。

市場の数字も海外に伝わった。浜銀総合研究所が2005年に発表した調査では、2003年度の萌え関連市場は888億円。対象はアニメとコミックとゲームで、グッズなどは含まれない。この数字はアニメニュースネットワークなど海外のメディアでも引用された。日本の匿名掲示板2ちゃんねるで始まった萌えキャラの人気投票、最萌トーナメントには海外のファンも加わり、海外発の同種の企画も生まれている。

人の名前にも使われる「萌」

春の訪れや生命の息吹きを思わせる漢字である「萌」。響きが柔らかく、日本では名前にも古くから使われてきた。

アルファベットで書くとどちらも「moe」だが、日本語でしたためた場合、オタク文化の文脈だと「萌え」、名前に一般的に使われるのは「萌」である。

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最終更新日

Japanese

萌え

Hiragana

もえ

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関連用語

関連する日本文化の用語をご覧ください。

推し

Oshi(おし)

推し(おし)は、自分がもっとも応援している人物やキャラクターのこと。アイドルグループの特定のメンバー、アニメや漫画のキャラクター、俳優、声優、スポーツ選手など、対象に制限はない。 動詞「推す(おす)」の連用形が名詞になった言葉で、「人に薦めたいほど好き」というニュアンスを含む。ただの「好き」より一歩踏み込んだ感情を表し、その対象の魅力を周囲にも広めたい、応援して支えたいという気持ちが込められている。 もともとはアイドルファンの間で使われていた用語だが、現在は日常会話にも浸透している。食べ物や場所、ブランドなど人物以外に対して使うことも多く、「推しのカフェ」「推しの色」のような表現も一般的になった。

尊い

Toutoi(とうとい)

尊い(とうとい)は、心を奪われた相手に、思わず拝みたくなるほど素晴らしいという気持ちを表すオタク・ファンの言葉。対象はさまざま。アニメや漫画のキャラクター、その二人の関係性、実在のアイドルや声優にも使う。胸がいっぱいになって、ただ好きと言うだけでは足りないときに口をつく。 ただ好きという感情より一段深く、信仰心に近い響きを持つのが特徴。愛おしさが極まると、もう相手を神様や仏様のように感じ、手を合わせたくなる。だからこそ、軽い称賛よりも強い熱量がこもる。場面によっては、ただ最高だと伝えたいだけのときにも気軽に使われる。 もとは神仏や人の命、気高い生き方に向ける格式の高い言葉である。それをファンが推しへの感情に当てはめたところに、この語の面白さがある。古い敬いの言葉が、現代のオタクの語彙としてよみがえった形。

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