那須温泉神社
Nasu Yuzen Shrine
那須温泉神社について
那須温泉神社は、九尾の狐の伝説が残る殺生石のすぐ隣に建つ神社です。栃木県那須町の那須湯本温泉、硫黄のにおいが流れてくる高台に鎮座しています。
社名は「なすゆぜんじんじゃ」と読みます。創建は7世紀前半、630年ごろと伝えられ、境内は開かれていて参拝に料金はかかりません。
JR黒磯駅から那須湯本温泉行きの路線バスで約35分、那須湯本温泉バス停から歩いて1分です。
白い鹿が導いた温泉
この神社の始まりは、一頭の鹿を追った狩人の話です。630年ごろ、狩野三郎行広という狩人が矢を受けて逃げた白い鹿を追い、山奥へ分け入りました。すると、その鹿が湧き出す湯につかって傷を癒していたといいます。
こうして見つかった湯が、いまも共同浴場として使われている鹿の湯だとされています。湧いた湯の守り神として祀られたのが、この神社の起こりです。
那須の湯が文献に現れるのも早い時期でした。738年の役所の記録には、小野朝臣という都の役人が従者12人を連れて那須へ湯治に向かったことが書かれています。奈良の都にまで、この湯の名が届いていたわけです。
祀られているのは、温泉と医薬の神である大己貴命と少彦名命に、弓矢の神である八幡神(誉田別命)を加えた三柱です。
温泉の神と弓矢の神が、ひとつの社殿に並んでいます。この神社の名が全国に知られるきっかけは、弓にまつわる出来事でした。
那須与一が扇を射抜いた神社
1185年、屋島の戦い。二つの武家、源氏と平家が瀬戸内海で対峙していました。平家方は小舟に扇を立てて掲げ、射てみよと源氏を挑発します。矢を任されたのは、那須の若い武士、那須与一でした。
与一は馬を海へ乗り入れ、波に揺れる舟の扇へ狙いを定めます。『平家物語』には、このとき与一が唱えた祈りが記されています。
「南無八幡大菩薩、我が国の神明、日光の権現、宇都宮、那須の湯泉大明神、願はくは、あの扇の真ん中射させてたばせたまへ」
那須の湯泉大明神。この湯泉を「ゆぜん」と読み、いまの那須温泉神社を指します。矢は扇を射抜き、扇は海へ舞い落ちます。
『平家物語』は13世紀前半に成立した軍記物語で、12世紀末の源氏と平家の戦いを描いた日本の古典です。扇の的の場面は教科書にも載っていて、日本では多くの人が学校で読みます。
戦いのあと、与一は神恩に感謝して社殿を寄進し、矢と扇を納めたと伝えられています。以来ここは勝負ごとの神社として知られ、いまも必勝祈願の参拝が絶えません。お守りを授かる窓口には、一矢必中守というお守りが並びます。名前がそのまま願いになっています(初穂料800円、2026年8月時点)。
境内に立つ九尾稲荷神社
社殿の脇には、九尾稲荷神社という小さな社があります。
すぐ裏手の殺生石は、都で正体を暴かれた妖狐が那須野へ逃げのび、討たれて毒石になったという玉藻前伝説の舞台です。稲荷は商売や作物の神で、狐を使いとする信仰。その形で九尾の狐を祀ったのが、この境内社です。商売繁昌や金運のほか、芸能成就の御利益があるとされています。
御朱印は那須温泉神社のものとは別に用意され、九尾をかたどったお守りもあります。恐ろしい妖怪として語られてきた狐が、同じ土地で福を招く神として祀られています。この振れ幅が、日本の信仰の面白いところです。
殺生石へは歩いて行けます

神社と殺生石は地続きです。境内から賽の河原へ下りる道があります。死者の魂が石を積むとされる河原になぞらえた一帯で、硫黄のにおいが強くなるにつれて草木が減り、灰色の岩肌と積み石が広がります。
神域を示す太い縄、注連縄の掛かった殺生石までは、ゆっくり歩いても10分ほど。この石は2022年3月に二つに割れ、いまも割れた姿のまま祀られています。
賽の河原の一帯では火山ガスが噴き出しています。濃度が高いときは立ち入りが規制されるので、現地の表示に従ってください。
温泉神社、殺生石、そして開湯の伝説が残る鹿の湯。この三つは、いずれも徒歩数分の範囲に集まっています。
参拝案内
住所は栃木県那須郡那須町大字湯本182です。
授与所の受付は9時から16時まで。参拝の記念に受ける朱印、御朱印は書き置きのみの対応で、あらかじめ紙に書かれたものを受け取ります。那須温泉神社・九尾稲荷神社・茶臼岳の山頂に置かれた奥宮の那須嶽神社と、3種類が用意されています(2026年8月時点)。
駐車場は大鳥居の下に県営の30台分があり、境内と殺生石側にも停められます。いずれも無料です。カーナビが神社まで正しく案内しないことがあるため、大鳥居が見えたら手前の県営駐車場に入るのが確実です。
車の場合は、東北自動車道の那須インターから那須湯本方面へ約30分。冬は路面が凍結します。
〒325-0301 栃木県那須郡那須町大字湯本182
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