歌舞伎とは?チケットの相場や代表的な劇場を紹介

Ayana Sasaki
From Yokohama

日本の伝統芸能の一つである「歌舞伎」。
日本人なら皆が”知っている”文化ですが、実際に観覧するには敷居の高い印象があり、皆が観たことがあるわけではありません。
この記事では歌舞伎初心者の皆さんに向けて、歌舞伎に関する基本的なことや、楽しみ方を紹介していきます。
歌舞伎とは?
先に述べた通り、「歌舞伎」は日本を代表する伝統芸能のひとつです。太古から受け継がれてきた文化であり、伝統的な着物の衣装と、派手な毛髪の被り物や化粧が印象的です。
歌舞伎の舞台に上がるのは基本的に「男性」のみ。演目は主に歴史上の出来事や江戸時代の庶民の生活を表したものが中心ですが、現代では新しい要素を取り入れたものも登場しています。
男性が「女性」を演じる伝統
歌舞伎の舞台に上がるのは男性のみですが、演目には「女性」のキャラクターも登場します。そんな時にはどうするのかと言うと、男性が女性の格好をして演じるのです。これを行う役や演者を「女方(おんながた)」と呼びます。
演じる男性俳優は女性らしい振る舞いや動作を徹底的に研究し、柔らかくしなやかで色気のある姿を演じるべく、指先ひとつにまでこだわって技を磨き続けています。
歌舞伎が男性のみで行われる理由
今でこそ男性のみで演じる「歌舞伎」ですが、そのなりたちは出雲阿国という女性から始まっています。彼女は男性の姿で舞う「男装」を取り入れ、女性たちからの人気も絶大。
民衆の間で広まった自由な文化でしたが、女性や子どもの性的な部分を押し出す面も存在していました。人気の高まりと同時に、そういった状況をコントロールするため「風紀が乱れる」という理由で、幕府が"女性"や"少年"による歌舞伎を禁じたのです。
そのため、歌舞伎が男性のみで演じられる文化は差別ではなく、逆に女性や子どもたちを守る側面があったとも解釈できるでしょう。
「成人男性のみ」で演じるようになったことで舞台のクオリティがより重視されるようになりましたが、民衆の間の人気は衰えませんでした。そして、現代においては伝統文化として今も「男性による歌舞伎」が受け継がれています。
歌舞伎の楽しみ方

「日本に行くなら文化に触れたい」そんな気持ちで歌舞伎に興味を持った方がたくさんいるでしょう。
ここからは、日本語が分からなくても「歌舞伎」が楽しめるように、どんな部分に着目するべきか案内していきます。
英語話者向けガイドを活用
劇場によっては「歌舞伎」の演目に対して、英語音声ガイドや英語字幕ガイドを準備しているところがあります。
例えば歌舞伎座では「英語字幕タブレットサービス」と「簡易イヤホンガイド」が用意されており、レンタル料金を支払うことで利用が可能です。
Service for foreigners | Guide to Kabuki | KABUKI WEB
伝統的な「衣装」を楽しむ
歌舞伎の衣装は、舞台の物語や人物像を一目で伝える“視覚の言葉”。
豪華な絹の着物、金箔や刺繍、季節の文様、役柄ごとに異なる鬘(かつら)や小道具などを用いて、英雄・姫・悪役などの性格を表現しています。
一部の演目で使われる「早替り(引き抜き)」は必見。衣装が一瞬で変わり、物語の転換を華やかに示します。
鑑賞の際には色や模様に注目してみると一層楽しめるかもしれません。桜・波・龍などのモチーフには役柄の感情や、場面の季節感が込められています。双眼鏡を準備して持ち寄り、布の質感や刺繍の細部まで味わうのも一興です。
役者による「芝居」を楽しむ
話し言葉とは異なる抑揚で、言葉遣いも現代とは異なる言い回しであることから、台詞の内容を完全に理解するのは日本人でも難しいです。
断片的に理解できる言葉を拾いながら、役者の芝居を楽しむのが歌舞伎の醍醐味の一つ。ミュージカルの舞台のようなものと捉えると分かりやすいかもしれません。
工夫を凝らした「音響」を楽しむ
歌舞伎の音響は、物語を“耳で感じる”仕掛けです。舞台袖の黒御簾(くろみす)内で鳴る「下座音楽」が奏でるのは三味線や唄だけではありません。
風は風機(風の音を出す回転器)、雷は雷板(大きな金属板)や太鼓、雨は竹筒と小石で“雨だれ”を表現、波は箱の中で玉を転がして音を作ります。鳥の声は笛、虫の声は小さな鈴など“鳴り物”で──。足拍子や衣擦れも「効果音」として計算し尽くされているのです。
見どころは「ツケ打ち」、花道の出入りや見得の瞬間に、板を打つ鋭い音で決め所を際立たせます。
英語音声ガイドを借り、音と動きのタイミングに注目すると、台詞が分からなくてもドラマが鮮明に伝わります。静寂が生む“間”にも耳を澄ませてみてください。
基礎知識があるとより深く楽しめる
舞台上の音響、装置、演じる役柄などにもそれぞれ意味や役割があります。
現代の日本人でも難しい「歌舞伎」の世界ですが、こういった要素を知っておくともっと楽しめるはずです。
歌舞伎の座席の値段はいくら?
歌舞伎の席料は安いものは3,500円~4,000円、高いものは17,000円~20,000円程です。金額は席の場所や、時期によって大きく変わります。
ここからは各座席の違いや、料金の目安を紹介していきます。(※金額のレートは記事公開時点のものを参考にしています)
1階桟敷席
¥17,000~¥20,000(約$113~$133)
花道沿いのボックス席。役者の出入りや「見得」、ツケ打ちの迫力を“真横”から味わえる通好みの視点です。飲食サービス(要予約)なども利用しやすく、ゆったり観劇したい人に最適。
1等席
¥16,000~¥18,000(約$107~$120)
舞台・花道に近く、衣装の質感や表情までよく見える万能席。迫力と臨場感を両立し、初めての歌舞伎にも安心です。人気が高く良席は早めの確保を。
2等席
¥12,000~¥14,000(約$80~$93)
1階後方や2階前方など、全体像がつかみやすいバランス型。型の美しさや舞台転換、花道との動線も見やすく、コスパ重視の観劇に向きます。
3階A席
¥5,500~¥6,000(約$37~$40)
上手・下手を含む舞台全景を俯瞰。群舞や大道具のスケール、照明の変化がクリアに把握できます。双眼鏡があると表情も追えて満足度が上がります。
3階B席
¥3,500~¥4,000(約$23~$27)
最も手頃な価格帯。まずは雰囲気を体験したい旅行者や、複数演目を“はしご”したい人におすすめ。英語字幕機器(別料金)を併用すると理解度がぐっと上がります。
観覧の服装に決まりはある?
周りの人たちに不快感を与えない、清潔な恰好であれば問題ないでしょう。
今でこそ敷居の高い印象のある歌舞伎ですが、歌舞伎の始まりと発展は「庶民のためのエンターテイメント」です。上流階級が楽しむ演劇として発展した「オペラ」等とは異なり、歌舞伎にはドレスコードのようなものはありません。
歌舞伎はどこで観られる?
歌舞伎を観られる劇場を3箇所ピックアップしました。
英語話者の方も楽しみやすい、英語案内のある劇場を中心に選んでいます。
歌舞伎座(東京・銀座)

現行の歌舞伎の“本拠地”です。
2013年に現在の五代目として再開し、伝統的な外観と高層オフィスタワーが一体化した複合施設。地下の木挽町広場や屋上庭園も併設されており、探索も楽しみの一つです。
英語字幕(Captioning)対応公演があり、月ごとの上演情報やKABUKI WEBの英語ページからチケット購入が可能。短時間で楽しめる「一幕見席(Single Act Seats)」の英語案内も一部対応しています。
南座(京都・四条)

創建の古い名門劇場。
毎年12月の「顔見世興行」が名物で、東西の人気俳優が集う京都の年末風物詩。鴨川近くの“歌舞伎発祥の地”に立つ老舗です。
英語の簡易オーディオガイド(要追加料金)や英語フライヤーが提供される公演があり、オンライン上で英語表示の購入フローにも対応しています。
大阪松竹座(大阪・道頓堀)

関西で歌舞伎を観る定番。
道頓堀の中心にあるネオ・ルネサンス様式の劇場で、クラシカルな客席体験が魅力。館内で弁当の販売もあり、観劇の合間の食事がしやすいのもポイントです。
公演により英語の簡易オーディオガイド付チケット(“Try Kabuki”など)が設定されることがあり、英語サイトで演目・発売情報を確認できます。
現代日本人にとっての歌舞伎
当時は「庶民のためのエンターテイメント」であった歌舞伎ですが、現代の多くの日本人にとっては、格調高く敷居の高いものとして捉えられています。寂しいことですが生まれてから歌舞伎について触れたことのない若者も大勢いるのが現状。
しかし、幼い頃から厳しい練習を続けてきた「歌舞伎役者」に対してはリスペクトを抱く人が多いですし、興味本位で観てみたら大ハマり……という人たちも少なくないでしょう。
現代とは異なる価値観、言葉遣いであることから、言っていることを完全に理解するのは日本人でも簡単ではありません。どういった状況なのかは役者の演技や雰囲気で読み取るのです。
そういった意味では、歌舞伎に初めて触れる海外観光客の方々と日本に住む人々で、「楽しみ方」は大きく変わらないのかもしれません。
Tags:
歌舞伎