藤原家と呪術廻戦、烏鷺VS乙骨戦での会話をもとに考察

呪術廻戦3期12話、烏鷺亨子が乙骨憂太に放った「オマエ藤原の人間か!!」の真意を解説。平安時代に朝廷を支配した藤原氏、乙骨の祖先・菅原道真の生涯と怨霊伝説、藤原に使い捨てられた烏鷺の過去、そして乙骨が菅原と藤原の両方の血を引く可能性まで、作中の歴史描写を掘り下げる。

約8分
藤原家と呪術廻戦、烏鷺VS乙骨戦での会話をもとに考察

呪術廻戦シーズン3の12話、とんでもない画でしたね。原作でも迫力ある場面でしたが、アニメ制作陣の気合いの入りようが伝わってくるクオリティでした。

さて、そんな話の中で交わされたやり取りの一つで、烏鷺亨子(うろたかこ)VS. 乙骨戦での「オマエ藤原の人間か!!」というセリフがありました。

”藤原”およびその家系を意味する”藤原氏”は日本人にとっては聞き馴染みがありますが、海外の方からすればピンと来ないのではないでしょうか。今回は藤原氏という存在と、乙骨憂太の祖先とされている人物をあわせて紹介し、海外の方にとってアニメ呪術廻戦をより深く楽しむきっかけを作れたら幸いです。

※ セリフなどはキャラクターの本来の意図を汲みやすいよう、日本語版を元にしています

平安時代を支配した一族、藤原氏

藤原氏は、日本の平安時代(794〜1185年頃)に朝廷の実権をほぼ独占した一族です。天皇の后として娘を送り込み、生まれた皇子が即位すれば外祖父として政治を動かす。こういった政略結婚を何世代にもわたって繰り返し、国の中枢における藤原氏の影響力は絶大なものになりました。

邪魔な存在は左遷や失脚に追い込み、容赦なく排除していく。呪術廻戦の作中では、この藤原氏の支配が呪術の世界にも及んでいたと描かれています。政治だけでなく、術師すら支配下に置いていたと捉えることができ、この後紹介する菅原道真も烏鷺亨子も、それぞれの形で藤原の権力に翻弄された存在なのです。

乙骨憂太の祖先・菅原道真

烏鷺は乙骨に対し「藤原の人間(藤原家の血筋)」と言いましたが、実際に作中で明かされていた彼の祖先は『菅原道真』という別人。しかし、藤原氏と関連がない訳ではなく、むしろ大いに因縁ある相手だと言えます。

呪術廻戦0で明かされた乙骨と五条の血筋

乙骨の血筋が明かされたのは呪術廻戦が連載される前の読切漫画およびアニメ化して劇場公開された『呪術廻戦0』でのこと。五条悟が、乙骨は菅原道真の子孫だと告げています。さらに五条悟の家系は呪術界の御三家のひとつで、乙骨はその遠縁にあたるとも発言していました。

菅原道真は日本の歴史において「日本三大怨霊」のひとりに数えられる実在の人物。死後に怨霊となり災いをもたらしたと伝えられてきました。呪術廻戦ではこの伝承を踏まえ、道真を「超大物呪術師」として描いています。乙骨の規格外の呪力量は、この血筋によるところが大きいとされています。

では、実際に存在していた歴史上の菅原道真とはどんな人物だったのでしょうか。

藤原氏に追い落とされた学問の天才、菅原道真の生涯

ここからは日本に伝わっている歴史の話。少々小難しいかもしれませんが、乙骨の強さを裏付ける“血筋”にふさわしい人物です。

菅原道真は平安時代(794〜1185年頃)の学者であり政治家です。幼い頃から和歌を詠み、朝廷における学問の最高職にまで上りつめた秀才でした。

宇多天皇は藤原氏の影響力を抑えるため、道真を朝廷で二番目に高い官職である右大臣にまで引き上げました。一番目の左大臣は藤原時平。学者出身の道真が、名門の当主と肩を並べるまでになったのです。

藤原時平の策略と大宰府左遷

しかし901年、藤原時平が醜醐天皇に虚偽の告発を吹き込みます。「道真が天皇を廃して自分の婿を即位させようとしている」と。まだ15歳だった醜醐天皇はこれを信じ、道真を九州の大宰府へ左遷しました。この大宰府という場所は、当時の中心都市であった京都から遠く離れた辺境の地で、事実上の追放です。

衣食もままならない暮らしの中、道真は無実を証明できないまま2年後に亡くなりました。

怨霊から「学問の神様」へ

ところが、道真の死後に異変が相次ぎます。左遷に関わった藤原菅根が落雷で命を落とし、藤原時平も若くして病死。天皇の住まいである清涼殿にまで雷が落ち、複数の貴族が犠牲になりました。

「道真の怨霊の仕業だ」そう恐れた人々は、その怒りを鎮めるために京都に北野天満宮を建立し、道真を神として祀ります。

現在は「学問の神様」として日本中で親しまれている道真ですが、その始まりは怨霊への畏怖だったのです。道真を祀る神社は全国に約12,000社。京都の北野天満宮や福岡の太宰府天満宮は、今も多くの参拝者が訪れる場所です。

地図を読み込み中...

そして道真を追い落としたのは藤原氏です。菅原と藤原は、日本史上の明確な敵対関係にあります。

烏鷺亨子の過去と藤原氏への憎悪

それでは話をフィクションである呪術廻戦のストーリーに戻しましょう。

漫画内で行われた描写を振り返り、烏鷺がなぜ藤原氏をそんなにも憎んでいるのかについて触れます。

日月星進隊、藤原氏直属の暗殺部隊

烏鷺亨子は作中の設定では平安時代に生きた術師です。物語の黒幕的存在である羂索との契約により、1000年後の現代に別の肉体で蘇りました。

作中で明かされた経歴は凄絶です。藤原氏直属の暗殺部隊「日月星進隊」の隊長。この部隊は滅私奉公を旨とし、所属する者は名前を持つことすら禁じられていました。烏鷺はこの組織で、主家のために数多くの”仕事”をこなしてきたのです。

ちなみに、部隊名の「日月星進」は四字熟語「日月星辰」に由来すると考えられています。これは太陽、月、星などの天空を意味する言葉で、「空」を操る烏鷺の術式になぞらえてつけられたことが分かります。

名前を与えられたのは処刑されるため

藤原氏のある人物が同族殺しを犯し、その罪をかぶせるために、烏鷺は初めて「烏鷺亨子」という名前を与えられました。身代わりとしての処刑。名前をもらった理由が、その人生に幕を下ろすためだったのです。暗殺の腕も、忠義も、捧げた年月も、何ひとつ報われることなく……。

この過去を背負って烏鷺は二度目の人生に臨んでいます。今度こそ「何者かに成る」こと、自分自身のために生きること。それが彼女の価値観において第一の指標となったのです。

烏鷺が乙骨に激昂した理由

烏鷺が藤原氏に対して憎しみを抱いた理由については飲み込めたと思います。ここからは、なぜ烏鷺が乙骨に対して「藤原の人間」であると感じたのかについて触れていきます。

乙骨の善意が踏んだ烏鷺の地雷

仙台結界での戦いの最中、烏鷺が怒りを爆発させたきっかけは乙骨のある問いかけでした。

「自分のためだけに生きるのは、きっといつか限界がくる」。自分本位ではなく他者のために生きることの価値を、押しつけるつもりなく、ただ率直に伝えたまでのこと。しかし烏鷺の耳には、まったく別の意味で響きました。

「誰かのために生きろ」「何者にも成る必要はない」。それは、かつて藤原氏が烏鷺に強いた価値観そのものです。名を捨てろ、自分を殺せ、主のために尽くせ。1000年前に自分を縛り、最後には使い捨てた者たちの論理が、目の前の青年の口から繰り返されたのです。

能力がありながらも、誰からも認められる事もなく、何者でもないまま散っていった烏鷺。「いつだってオマエらだ!! 私の道を阻むのは!!」、思わずそう激昂したのも理解ができます。

自分を削りながら他人のために尽くそうとする乙骨も非常に危ういと感じていますが……、それについては今回は触れずに進めましょう。

乙骨は菅原と藤原、両方の子孫?

さて、先述した通り乙骨は菅原道真の子孫です。歴史上、菅原は藤原に迫害された側。にもかかわらず、烏鷺の目には乙骨が「藤原」に映りました。

この辺りの真意は作者のみぞ知る……、というところですが、少し考えを巡らせてみます。ここからはアニメに出ていない原作の情報を含みますので注意してください。

乙骨自身にも分からない

『呪術廻戦0』の終盤で五条が伝えたのは「菅原道真の子孫」という事実だけ。藤原の話は一切出ていません。次に仙台結界(原作176〜178話)で烏鷺が乙骨を「藤原の人間」と認識。そして原作漫画20巻の幕間では、乙骨自身が「(自分の血筋は)五条さんに言われた菅原家なのか、烏鷺に言われた藤原家なのか」と困惑する姿が描かれました。

Manga sketch of Nanami Kento with a tired, confused expression, a speech bubble, and a question mark.

"Fujiwara...? Mr.Gojo said Sugawara...., anyway, maybe he said wrong it." / Jujutsu Kaisen Comics Vol.20 / (c) Gege Akutami, Shueisha

五条が示唆した「どっちも正解」の意味

決定的だったのは原作261話。乙骨が五条に「”藤原”の血を引いてるっていわれたんですけど、五条先生”菅原”って言ってませんでした?」と直接尋ねた場面で、五条は「案外両方合ってるかも」という趣旨の返答をしています。(そして「生まれは僕より恵まれてるかも」とも)

この五条の言葉によって、乙骨が菅原と藤原の両方の血を引いている”可能性”について、作中で明確に示唆されました。

歴史的にも不思議ではありません。平安時代の貴族は政略結婚が常で、敵対する氏族同士でも婚姻を結んでいました。菅原道真の娘が藤原氏に嫁いだ記録も残っています。1000年以上の世代を重ねれば、対立していた一族の血がひとりの人間の中で合流していても不思議ではないでしょう。

日本人としてはもし菅原道真に加えて藤原氏の血も入ってるとすれば、この上ない贅沢だなあ……と感じます。

対照的な二人

権力者に使い捨てられた者と、名家の血を引く者。「自分のために生きたい」と願う者と、「人のために生きる」ことを自然に口にする者。

恨みを抱いたまま1000年前に最期を迎えた烏鷺と、呪いにも近い血筋と圧倒的な力を持ちながら誰かのために戦える乙骨。数々の対比がありますが、この二人の大きな違いは根本を辿ると”生まれた時代”と”周りの環境”でしょう。

乙骨が最後に「自分は恵まれている」と言った趣旨の発言は、血筋のことだけではないのかもしれません。

この先の展開も期待十分

アニメの作画や演出に非常に気合が入っており、見応え十分な12話でした。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、今後も数々の衝撃とワクワクする展開が待っているので、アニメ勢の皆さんは大いに期待して待っていていいと思います。もちろん、人によっては大いなる悲しみを背負うことになるかもしれませんが……。

原作は完結してからしばらく経っていますが、私は今でも最終巻やその周辺を時々読み返しています。呪術廻戦は見せ場での魅せ方が上手くて良いですよね。

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公開日 最終更新日

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