日本の卒業式と入学式、海外との違いは?
日本の卒業式・入学式の特徴を海外と比較しながら解説。服装や合唱、贈り物の文化に加え、第二ボタンなどアニメ・漫画で描かれる学校行事の定番シーンも紹介します。
日本には、子供たちや学生が学校に通い始める初年度に行う「入学式」という式典があります。また、教育課程を修了した際には「卒業式」でお祝いをします。
入学・卒業の時期は国によって様々ですが、日本では4月1日から翌年3月31日を「年度」としており、3月に卒業式、4月に入学式を行う場合がほとんどです。そのため、春は出会いと別れの季節とされており、春の花である桜も、出会いや別れの象徴とされています。
日本の卒業式・入学式は厳かな雰囲気が特徴
世界的に見ると「入学式」を行う国は少なく、「卒業式」は教育課程の修了をお祝いするパーティーのような雰囲気が中心となっています。
しかし、日本における学校は、教育機関であると同時に集団生活の規律、礼儀作法を学ぶ場でもあります。新生活の始まりである入学式、学生生活を締めくくる卒業式は、重要な式典・人生の一つの節目として位置づけられています。そのため、学生、教職者、保護者や来賓は正装で臨み、静かで厳かな雰囲気の中で行われます。
日本の教育機関は、大きく分けて5つ
- 就学前の乳幼児が通う認定こども園・幼稚園・保育園
- 6歳から12歳が通う小学校
- 12歳から15歳が通う中学校
- 15歳から18歳が通う高等学校
- 基本的に18歳以上が通う専門学校・短期大学・四年制大学と大学院
いずれも1年生になる年に入学式(入園式)、課程を修了した年に卒業式に参加します。式典は学校の体育館や講堂で、30分~2時間程行われます。
3月に行う卒業式は成長を祝い、別れを惜しむ式典

卒業式で一人ひとりに渡される卒業証書。持ち帰るときは丸めて円筒にしまいます。
欧米などの卒業式はパーティーのような明るい雰囲気のイベントですが、日本の卒業式は基本的に厳かな雰囲気。学生生活を共に過ごした仲間や恩師との別れの儀式であり、温かくもしんみりした空気が漂っています。
学校によって式典の内容は変わりますが、国旗の掲揚と国歌斉唱、校長や来賓によるお祝いの挨拶、卒業証書の授与、在校生から卒業生に向けた送辞(感謝やお祝い、激励のスピーチ)・卒業生による答辞(在校生や教師、保護者への感謝と卒業の喜びのスピーチ)などを行うのが一般的です。

式典の様子/基本的に式典は体育館で行われます。生徒は教室で使用している椅子を運んできて座り、先生や保護者はパイプ椅子を使用します。
合唱で感謝や激励を伝えることも
卒業生、在校生それぞれが合唱を行う学校も多く、合唱曲では「仰げば尊し」、「旅立ちの日に」、「大地讃頌」などが定番。また、卒業ソングとして大ヒットしたポップスやボーカロイド曲が合唱用に編曲されることも増えています。
卒業生、在校生共に明るくハッピーな曲を歌って盛り上がるというよりは、しっとりとした曲が中心。学校生活をしみじみと思い出したり、激励、感謝といったメッセージを伝えたりする場面で、歌っている生徒はもちろん、聞いている教師や保護者が涙を流すことも多くあります。
卒業式の服装
世界的に見ると、卒業式と言えばアカデミックドレス(ガウン)と角帽のイメージがありますが、日本では学校指定の制服を着用する場合が多いです。多くの中学校、高校には制服があるため、制服で式典に参加します。小学校の卒業生は、入学予定の中学校の制服を着る場合とフォーマルな服装で参加する場合があります。

袴姿で卒業証書を持つ女性。大学の卒業式では袴を着る方が多いです。
大学においては基本的に自由な服装で参加しますが、男性はスーツ、女性は袴を着用することが多いです。袴は大正時代の女学生が着用していた服であり、奈良・平安時代には宮廷服や巫女装束として用いられていた伝統的な和装です。着物をベースに動きやすさをプラスした、華やかで品格のある服装として愛されています。
また、服飾の専門学校や芸術系の大学などでは、卒業生が衣装を手作りするのが恒例になっていることも。ユニークな仮装を披露する卒業生も多く、笑顔溢れる卒業式が行われます。
保護者や教師も、スーツやフォーマルで参加します。母親はグレーやネイビー、ブラック、父親はダークスーツが中心。教師も基本的に同じですが、クラス担任の女性教師などは袴を着ることもあります。
卒業から約1ヶ月後に行われる入学式
高校までは学生服、大学ではスーツで参加するのが一般的です。卒業式と同じく式典が行われた後、教室に移動して担任の先生から、初年度に使用する教科書や書類を受け取り、学校の設備や行事についての説明を聞きます。
新入生が教室で説明を受けている間、保護者はPTA(Parent-Teacher Association)と呼ばれる保護者と教職員で組織された団体の入会式や顔合わせを行います。

教科書が入ったランドセル/日本では教科書やノートを置いて帰ることが禁止されている学校も多く、丈夫な通学カバンが欠かせません。
入学式の服装
学校指定の制服、またはフォーマルな服装で参加します。大学の入学式は男女ともにスーツを着用することが多いです。
保護者や教師はスーツまたはフォーマルで参加しますが、卒業式と違って明るいカラーを着用します。コサージュやアクセサリーも華やかなものを合わせることが多く、新生活の始まりに対するお祝い、未来への希望が服装にも表れています。
卒業後の休暇はわずか数週間
9月入学・始業の学校の場合、長い夏休みを挟んで新たな学年がスタートします。しかし日本では、3月の初旬に卒業式を行い、4月初旬に新学期が始まります。
進学に伴って引っ越しをする場合もあり、卒業式から1ヶ月程度というタイトなスケジュールで賃貸契約から入居まで済ませなければなりません。多くの学生は合格前から部屋探しをはじめ、合格が決定したら契約を行います。後期選抜の合格発表は3月下旬になるため、進路がなかなか決まらない生徒とその親は、受験対策と並行して住居探しを進めなければいけません。
在校生は始業式・終業式にも参加
小学校・中学校・高校では、在校生を対象に、「終業式」と「始業式」も行われます。こちらは入学式・卒業式ほど大掛かりな学校行事ではなく、保護者は参加しません。
日本では、春休み、夏休み、冬休みで学期を分けている場合が多く、その区切りに集会を行います。修了証書の授与や、別の学校に赴任する先生・新任の先生の紹介などが行われます。
卒業・入学におけるお祝いの品
卒業の際は学校生活の思い出となる記念品、入学の際は新生活や学業に役立つ品などを送ります。
卒業祝いは形に残るものが中心
日本では、卒業する学年の生徒たちに卒業アルバムや卒業文集が贈られます。卒業アルバムには、各クラスの集合写真、一人ひとりの顔写真、学校行事や部活動を楽しんでいる様子などが掲載されます。このアルバムには、友人や恩師、後輩からメッセージを書いてもらう「寄せ書き」用の白紙ページがついており、卒業式の前後に感謝や激励の言葉を書いてもらうのが一般的です。

卒業アルバム/卒業生全員の顔写真、学校行事や部活動の写真が掲載されます。
卒業文集は、将来の夢、学校生活の思い出などをつづった作文を集めたものです。生徒一人ひとりの作文、担任の先生や関わりの深かった先生たちの文章、「将来有名になりそうな人」などのランキングが掲載されます。
他にも、部活動などの後輩から、卒業生に向けてお祝いや感謝の言葉を書いた「色紙」と呼ばれる寄せ書き用のボードを渡したり、学校から卒業生への記念品として、それぞれの名前の判子や名入れボールペン、紅白まんじゅう(日本では赤と白の組み合わせはおめでたい色とされています)などを贈ったりもします。

紅白まんじゅう/小麦粉などを練って蒸した和菓子で、中にあんこが入っています。赤(ピンク)と白の2色セットで配られます。
入学祝いは実用性を考慮したアイテム
アルバムや寄せ書きなど、学生生活の思い出を残す卒業祝いに対して、入学祝いは文房具や辞書などが贈られることが多いです。学校からは「進学・進級おめでとうございます」というメッセージ、日本独自のランチシステムである「給食」がある場合はケーキやちらし寿司などのお祝いメニューが出る、学校名や生徒の名前が入った文房具が配られるなど、ささやかなお祝いが中心。
入学祝いは両親や祖父母などの親族から贈られるのが一般的で、ランドセル(本革で作られた通学用カバンで、数万~数十万円)や電子辞書、ノートパソコンといった高価なものになることが多くあります。
小学生が6年間使うランドセル

赤と黒のランドセル/近年では色や模様が多彩になっており、購入の際に悩む親御さんも多くいます。
学校指定のリュックなどがある場合もありますが、多くの場合、通学時のカバンとしてランドセルを使用します。
ランドセルは革で作られた丈夫なリュックで、雨や汚れに強く背負いやすいのが特徴。収納力も高く、教科書やノート、文房具などの荷物をまとめて入れることができます。また、反射材が付いていたり、万が一の事故に備えてクッション性が重視されていたりと、子供たちの安全を守る工夫がたくさんあります。
かつては女子であれば赤、男子は黒のランドセルが主流でしたが、現在では好みに合わせられるようカラフルなラインナップになっているほか、刺繍などのデザインが施されたものも増えています。
アニメや漫画における卒業式
学生や教師を主人公にした作品においては、キャラクターの成長や別れにつながる一大イベントとして描かれることが多くあります。学生の恋愛や学校生活といった青春物では卒業式が最終回、またはクライマックスとなることもあり、重要な意味を持つイベントといえるでしょう。
1年間過ごした教室でクラス全員の写真を撮る、黒板にチョークでメッセージやイラストを描くというシーンも定番の一つとなっています。教室の机や壁にこっそりメッセージを残す場合もあります。

黒板アート/先生から生徒に向けて書くことが多いですが、漫画やアニメではメインキャラクターたちが書くこと多いです。
ラブコメの定番「第二ボタン」

「学ラン」と呼ばれる男子の制服。中学校や高校で採用されています。
恋愛漫画のメインキャラクターが「学ラン(詰襟かつ立ち襟の学生服)」を着ている場合、ヒロインたちによる第二ボタンの争奪戦、意中の相手へ無事に第二ボタンを渡せるのか・もらえるのかといったエピソードが描かれることがあります。学ランの第二ボタンは心臓に最も近い場所にあることから、「自分の心を渡す」という意味があり、重視されています。
現在では卒業後もSNSなどで連絡を取ることができますが、かつては学校で会う以外は家に電話をする・手紙を書くなど、高いハードルがありました。特に高校を卒業すると大学に行くため上京するなど、距離が遠くなることもあり、「卒業」は一大イベントでした。そのため、特に昭和~平成初期までの漫画やアニメでは卒業式での告白、第二ボタンのやり取りが大きなモチーフとなっていました。
平成に入るとブレザータイプの制服が主流となったこと、携帯電話の普及などにより、第二ボタンの登場は減っています。しかし、「本命に第二ボタンを渡す」というイメージは根強く、「女子に人気のあるキャラクターが制服のボタンを全部奪われる」といった描写は健在。
女の子同士の恋愛を描いた「百合」または「GL(ガールズラブ)」と呼ばれるジャンルの作品では、セーラー服のスカーフや制服のリボンを渡す描写になっていることもあります。
アニメや漫画における入学式・始業式
学生や教師を主人公にした作品では、4月に行われる入学式や始業式が物語の始まりとなることが多いです。恋愛物であれば主人公とヒロイン・ヒーローの出会い、スポーツ物であればライバル兼相棒となるチームメイトや先輩、頼れるコーチや先生との出会いが描かれます。
また、主人公の入学から卒業までが描かれる作品の場合、4月をきっかけに新章がスタートし、後輩をはじめとする新キャラクターが登場することもあります。
ラブコメの場合、進学をきっかけに一人暮らしを始める、両親が転勤で一人暮らし状態になるなど、新生活が始まるきっかけになることが多いです。
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