Heisei Retro
意味
平成レトロ(へいせいれとろ)は、平成時代のモノやデザインを懐かしみ、今の暮らしにあえて取り入れる流行を指す言葉。平成は1989年から2019年までの30年あまりにわたる。ただし平成レトロが主に扱う範囲は前半から中ごろで、西暦でいえば1990年代から2000年代前半である。
広めている中心層は、その時代をほとんど知らない10代から20代。生まれる前や物心つく前の日用品が、見たことのないデザインとして目に入る。当時を過ごした世代にとっては同じものが素直に懐かしく感じることから話題になりやすい。
昭和レトロに続くレトロブームの一つとして語られる。英語圏でも Heisei retro として紹介され、たまごっちやプリクラを入り口に1990年代の日本へ関心を持つ層が出てきている。
語源
平成は1989年から2019年まで
平成の始まりは1989年1月8日。前日に昭和天皇が崩御し、翌日から新しい元号に切り替わった。終わりは2019年4月30日で、こちらは天皇の生前退位による改元。バブル経済の崩壊から東日本大震災まで、大きな出来事の続いた30年あまりでもある。携帯電話とインターネットも、この時代に家庭へ広まった。
ただし平成レトロが扱う範囲は、この30年すべてではない。おおむね前半から中ごろ、スマートフォンが普及する前までが対象になる。平成後期にあたる2010年代は、まだ地続きの感覚が強いためかほとんど含まれない。どこまでを入れるかは論者によって幅があり、1990年代に限る見方もあれば、2000年代前半まで広げる見方もある。
代表的なアイテム
ポケットベル(通称ポケベル)やガラケー、カセットテープといったアナログな機器が、平成レトロの代表格。数字の語呂合わせでメッセージを送り、聴きたい曲まで巻き戻す。いまなら一瞬で済むことに、ひとつずつ手数がかかった。効率のよさが当たり前になったいま、その手数が面倒ではなく楽しみとして受け取られている。ガラケーで写真を撮ったり当時の音楽を聴いたりできる店も出てきた。

日本で独自に進化した多機能なガラパゴスケータイ、通称ガラケー
粗い写りも魅力のひとつ。写ルンですは現像するまで仕上がりが見えず、その一発勝負が面白いとされる。富士フイルムは発売から40年目の2026年に、防水の写ルンです Activeを加えた。1990年代から2000年代前半のコンパクトデジタルカメラも同じで、画素数の低さやピントの甘さがそのまま持ち味になっている。プリクラでも、平成の機種の粗い画質や加工の薄さをわざと再現する企画が出てきた。

シール帳とボンボンドロップシールをはじめとした「ぷっくりとしたシール」は子供達の間で大人気
育てたり集めたりする遊びも根強い。たまごっちは2025年の新作の予約が前作の4倍まで伸びた。小学生にとどまらず、買い手は当時遊んだ20代から40代にも広がっている。カバヤ食品のセボンスターは、ペンダントを集めて飾る楽しさがSNSと合い、20代前半の購入割合がおよそ2倍になった。

ルーズソックス
ファッションではルーズソックスが戻ってきた。ただし1990年代のスーパールーズのような長さではなく、いまは50cmから80cmが主流。制服だけでなく私服にも合わせ、色も白のほかにピンクや黒が並ぶ。当時をそのままなぞるのではなく、今の服に混ぜて使う形。
実物が手元に残るところも大きい。サンエックスのたれぱんだのような脱力系キャラクター、香り付きの消しゴム、友だちと回して書き合うプロフィール帳なども、子供達とその母親世代からの人気を博している。
見た目の特徴
半透明のスケルトンが、いちばん分かりやすい特徴である。1998年のiMac G3が広めたとされるデザインで、ゲーム機から携帯電話・文房具まで、中身の透けるモデルが店頭に並んだ。
配色では原色と蛍光色にパステルが混ざる。丸みのある書体、装飾を詰め込んだレイアウト、粗いドット絵。デジタル技術がまだ荒削りで、その荒さがそのままデザインに表れている。
整理の行き届いた今のデザインと比べれば、情報が多くまとまりに欠ける。その過剰さが若い世代には新鮮に映っている。
平成レトロという言葉の登場
2017年、平成文化研究家の山下メロがこの言葉を提唱した。レトロという括りが昭和で止まったままで、平成のモノが顧みられないうちに捨てられていく。その危機感が出発点にある。
候補には平成ヴィンテージや平成ノスタルジーもあったが、馴染みのある言葉のほうが意味は伝わるとして、レトロを選んだと本人が語っている。
2019年の令和改元で平成がひとつの区切りになり、言葉は広く使われるようになる。2021年には日経トレンディのヒット商品ベスト30で「昭和・平成レトロブーム」が4位に選ばれている。
用例
- 1 「このスケルトンのゲーム機、平成レトロでかわいくない?」
- 2 「実家からポケベル出てきた。平成レトロすぎるでしょ」
- 3 A「プリクラ帳まだ持ってるの?」B「平成レトロの資料だから捨てられない」
- 4 「今日のコーデ、平成レトロ意識してルーズソックス履いてきた」
補足
昭和レトロとの違い
昭和レトロが向く先は、高度経済成長期の街並みや純喫茶のクリームソーダ。いまの若い世代には直接の記憶がない風景である。平成レトロはもっと近い。親か本人がぎりぎり触れている距離にあり、当時を知る世代がまだ現役で働いている。
Y2Kとの重なり
海外発のY2Kファッションとは重なる部分が大きい。ただしY2Kが2000年前後という西暦の区切りで語られるのに対し、平成レトロは元号で線を引く日本独自の呼び方である。1990年代の前半までさかのぼる点でも、平成レトロのほうが守備範囲は広い。
平成をレトロと呼ぶことへの反発
言葉が広まった2021年ごろには、SNSで違和感の声も上がった。まだ数年前のことをレトロと呼ぶのはおかしい、という反応である。
名付け親の山下メロは、平成全体ではなく懐かしい部分だけを指す言葉だと伝わりにくかった点を挙げている。名前の付け方にも問題があったと振り返る。
いま起きていること
復刻と再流行が相次ぐ。たまごっちは2025年7月に世界累計出荷1億個を超え、写ルンですは2015年を底に売上を戻した。粗い写りを求める若い層に買われて、中古のコンパクトデジタルカメラの相場も上がっている。ルーズソックスは2020年代に入って店頭に戻ってきた。
展示や店舗も増えつつある。2024年11月には渋谷に平成レトロカフェRETOPOがプレオープンし、2025年夏には西武渋谷店で山下メロ監修の「NEO平成レトロ展」が開かれた。
最終更新日
Japanese
平成レトロ
Hiragana
へいせいれとろ
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