Kikokushijo
意味
帰国子女とは、親の海外赴任などに伴い海外で生活した後、日本に帰国した子どものこと。
「帰国」は母国に帰ること、「子女」は「子(息子)」と「女(娘)」の総称で、男女を問わない。「女」の字から女性限定と誤解されやすいが、男子にも使われる。現在、文部科学省は「帰国児童生徒」の呼称を用い、海外に1年を超えて在留した後に帰国した児童生徒と定義している。
英語ではreturneeが近い概念にあたり、異文化環境で育った子どもという意味でthird culture kid(TCK)とも重なる。アニメやマンガでは定番のキャラクター属性としても広く知られている。
語源
「帰国子女」は教育行政の現場から自然発生的に定着した用語とされており、特定の人物が造語したという記録は確認されていない。1960年代以前は「在外邦人子女の帰国後」「海外勤務者子弟」のような記述的な表現が主流で、4文字の複合語として定着するのはもう少し後のこと。
確認できる早期の用例としては、1963年に桐朋教育研究所が実施した「帰国子女の教育の実態調査」がある(桐朋教育研究所所報第8号)。ただし、この時点で「帰国子女」という4文字の表記が実際に使われていたかどうかについては議論が残っている。
制度面の整備は1960年代半ばに始まっている。1964年の国会答弁をきっかけに、翌1965年には東京学芸大学附属大泉中学校で国公立初の帰国子女教育学級が開設された。1966年の同学級の募集要項には「海外勤務者帰国子女の中学校教育を行なう」と明記されており、この頃には行政用語として固まっていたと見られる。1977年には文部省(現・文部科学省)の学校基本調査に帰国子女数の項目が新設され、統計的な把握も制度化されている。
「子女」をめぐる議論
「子女」の「女」の字が女性限定の印象を与えやすいことから、性差別的ではないかとする声は早くからあった。文部科学省が公式文書で「帰国児童生徒」という表現を採用しているのもこの流れを受けたもの。また、1980年代には「海外成長日本人」という代替案が袰岩ナオミ氏から提案されたり、1990年頃からは当事者が自分たちを「キコク」とカジュアルに略す動きも見られたが定着には至っていない。
一般的には「帰国子女」がそのまま定着しており、現在も最も広く使われている。
用例
- 1 「うちの学校、来学期から帰国子女の転入生が来るらしいよ」「へえ、どこの国から?」「アメリカだって。英語ペラペラなのかな」
- 2 「帰国子女だからって英語できると思わないでほしい。住んでたの幼稚園までだし」「え、それでも帰国子女扱いなんだ」「書類上はね」
- 3 「このキャラ、帰国子女設定なのにやたら英語の発音だけ良くて笑う」「帰国子女キャラあるあるすぎる」
- 4 「帰国子女って男にも使うの?なんか“女”って字入ってるから女だけかと思ってた」「“子女”は“息子と娘”って意味だから男女関係ないよ」
補足
帰国子女は、日本語とは違う言語を流暢に話す、異文化にも精通している、一般的な日本人とは少し違ったセンスを持っている、などのことから好意的に見られることが多い。
反面、そういった「日本において一般的ではない」という特徴を理由に孤立してしまうこともある(後述)。
フィクションにおける帰国子女キャラ
アニメ、マンガ、ドラマでは「帰国子女キャラ」が定番属性のひとつとして確立されている。典型的な描写としては、会話に英語を交えて話す、日本の空気を読む文化に馴染めない、自由奔放で物怖じしない、容姿が目立つといったパターンが多い。学園ものでは転校生として登場し、主人公やクラスメイトに新しい価値観をもたらす役割を担うことが多い。
帰国子女が直面する現実
フィクションでは華やかに描かれがちな帰国子女だが、現実には文化的な摩擦に苦しむケースが少なくない。日本社会の強い同調圧力の中で、海外で身についた振る舞いや価値観が「空気を読めない」と見なされ、いじめや孤立の原因になることもある。
「出る杭は打たれる」という日本のコミュニティにありがちな感覚との衝突は根深く、英語が話せることが羨望の対象になると同時に、「帰国子女アピール」として反感を買う場合もある。帰国子女本人たちの中には、目立たないようにあえて英語力を隠す人もいるという。
昨今はインターネットの発達によりこういった傾向は都市圏ではあまり見られない。しかし、小さなコミュニティや地方の閉鎖的な町村ではまだまだ根深い問題として残っている。
「帰国子女」と英語のthird culture kid
英語圏では、親の仕事などで母国以外の文化圏で育った子どもをthird culture kid(TCK)と呼ぶことがある。母国の文化(第一の文化)でも滞在先の文化(第二の文化)でもない、独自の「第三の文化」を内面化しているという意味合いの表現。帰国子女もこの定義に当てはまるケースが多いが、TCKは国籍を問わず使われる広い概念であるのに対し、帰国子女は日本特有の制度的・文化的文脈と結びついている点が異なる。
- 外部リンク
帰国・外国人児童生徒教育等に関する施策概要 ― 文部科学省
文部科学省による帰国児童生徒教育の施策概要。定義や支援体制の公式情報。
帰国児童・生徒数及び外国人児童・生徒数 ― 総務省統計局
統計局による帰国児童生徒数の統計データ。学校基本調査に基づく定義も確認できる。
Kikokushijo: 日本の帰国子女のジレンマ ― Tofugu
海外で育った日本人の子どもが帰国後に直面する文化的課題についての英語記事。
最終更新日
Japanese
帰国子女
Hiragana
きこくしじょ
Table of Contents