『ダンダダン』に登場する怪異・妖怪の元ネタを解説

Sana Yoshida

週刊少年ジャンプ+で2021年4月から連載されている人気漫画『ダンダダン』。
オカルトオタクの少年・高倉健(オカルン)と、霊媒師の祖母がいる少女・綾瀬桃(モモ)が、とあるきっかけで様々な怪奇現象と戦うことになるバトル漫画です。
高い画力で描かれる魅力的なキャラクターたちと迫力満点なバトル、コミカルながら緊迫感あるストーリーで、日本国内はもちろん海外からも愛されている本作。
日本だけでなく世界の妖怪・怪奇現象、都市伝説・伝承、UMAや宇宙人まで幅広く登場するのも魅力といえるでしょう。
この記事では、作中に登場する怪奇現象について、日本独自の怪異を中心に詳しく解説していきます。
主要キャラクターと関係の深い怪異 【アニメ登場済】
ターボババア/日本の都市伝説
別名・100キロババア、ジェットババアなど。トンネルや高速道路などの道に出現し、車並みの速度で追いかけてくる老婆の怪異です。80歳以上の老婆の見た目をしていることが多く、背中に「ターボ」と書いた紙を貼っていたり、着物を着ていたりという特徴があると言われています。
兵庫県の六甲山をはじめ全国で目撃談があり、車やバイクを追い越していくだけの場合もあれば、事故に合わせる場合も。対処方法としては、「振り返らずに逃げる」ほか、「立ち止まってやりすごす」などが伝えられています。
また、派生として三輪車に乗っていたり、リヤカーを引いていたりすることも。人間とは思えない速度で走る怪異として、老婆以外に老翁、少女、犬や猫、サラリーマン男性、赤ちゃんの姿をしたものもいるそうです。
セルポ星人/宇宙人
クローンによって個体数を増やす、全員が雄の宇宙人です。元ネタは1960年代にアメリカ合衆国が秘密裏にレティクル座ゼータ連星系の惑星セルポへアメリカ軍人12名を交換留学に出したという都市伝説「プロジェクト・セルポ」だと言われています。
見た目は特撮ウルトラマンの「三面怪人 ダダ」に似ている
日本では昔から根強い人気のある「ウルトラマン」。体の模様はご覧の通り、セルポ星人のデザインに多大な影響を与えていることが分かります。
“三つの異なる顔を持ち、三体居るように見せかけていた。
人間標本の採集のため、宇宙線研究所を襲って四名の研究員を標本にした。
という円谷プロ公式の説明にも、ダンダダンに登場したセルポ星人と似通った部分があります。
アクロバティックサラサラ/日本の都市伝説
赤い服と赤い帽子、非常に長くさらさらとした髪が特徴の怪異です。異様に背の高い女性で、眼球がなく目の部分は真っ黒、口と歯が大きく、左腕にリストカットのような傷があると言われています。
福島県郡山市を中心に目撃情報が挙がっている比較的新しい都市伝説で、2008年頃に「2ちゃんねる」に書き込まれた投稿から広まっていったと考えられます。
ビルや電車に飛び移るなど、人間離れした動きをすることから「アクロバティック」、風がなくても揺れたり意思を持っているように動いたりするさらさらの髪の毛から「サラサラ」という名前が付いています。
ドーバーデーモン (シャコ)/UMA
作中ではシャコの身体的特徴を持つ地球外戦闘民族として描かれています。元ネタはアメリカ・マサチューセッツ州で目撃された、瓜型の大きな頭部、頭に対して細く小さな体と手足のUMAです。
『ダンダダン』においては、どちらかというとウルトラ怪獣のようなビジュアルをしており、設定も様々なSF作品のネタが盛り込まれています。
邪視 (じゃし)/世界の民間伝承
別名・邪眼、魔眼、悪魔の目(イービルアイ)など。悪意を持って睨みつけることで相手に呪いをかける力です。2008年に「2ちゃんねる」に投稿された、見たものに希死念慮を抱かせる怪異「邪視」の話に、おなじく2ちゃんねるに投稿されて都市伝説となった「くねくね」と「ヤマノケ」も組み合わせたキャラクターになっていると考えられます。
「くねくね」は、田んぼや川の近くに現れてくねくねと不思議な動きをするモヤのような怪異で、それを直視し、それが何かを理解すると精神に異常をきたすと言われています。
「ヤマノケ」は山の霊のようなもので、“悪意の総称”として描かれています。姿を現した際は、頭がなく胴の部分に顔が付いた一本足の妖怪で、「テン…ソウ…メツ…」と繰り返しながら近づいてくると言います。女性に取り憑いて正気を失わせる怪異です。
Creepy Nutsによるアニメ1期OP『オトノケ』のタイトル、歌詞の中にある「ハイレタ」というワードも、「ヤマノケ」が元ネタだと考えられます。
作中で取り上げられた怪異 【アニメ登場済】
地縛霊/日本の幽霊
事故や災害などで死亡し、自分が死んだことを受け入れられない、自分の死に気付いていないなどの理由で、死亡した土地や建物から離れられずにいる霊のことです。特別な思い入れがある場所、強い恨みや憎しみがある場所に留まっている霊もいます。
走る人体模型/日本の怪談
「学校の七不思議」の1つ。理科室にある人体模型が、放課後や夜中に動き出すという話が元になっています。
「学校の七不思議」とは…
学校にまつわる階段を7つ集めたもの。学校や地域によってさまざまなバリエーションがあります。8つ以上の怪談が存在する場合もあれば、7つ目の不思議を知ると死んでしまうとして6つ目の謎までしか伝わっていない場合もあります。
モンゴリアンデスワーム/UMA
ゴビ砂漠周辺に生息すると言われている、巨大なミミズのような未確認動物のことを言います。現地では、牛の腸に似ていることからオイゴルホイホイ(олгой-хорхой)と呼ばれているんだとか。
成虫は体長約1.5メートル、体重9キログラムと言われていますが、『ダンダンダン』作中においては体長数キロメートルの怪物として登場しました。
音楽室の肖像画/日本の怪談
「学校の七不思議」の1つ。音楽室に飾られているベートーヴェンやモーツァルト、バッハなどの肖像画が夜になると動き出す、目が光るなどの話が元になっています。
バモラ/宇宙人・怪獣
シュメール人という宇宙人の生き残りとして地球にやってきたバモラ。キャラクターの名前と、巨大化する怪獣スーツのビジュアルの元ネタは『ウルトラマン』をはじめとする特撮作品だと考えられます。また、怪獣スーツを脱ぐと『新世紀エヴァンゲリオン』に登場するプラグスーツのようなものを着ており、様々なSFネタが盛り込まれたキャラクターです。
主要キャラクターと関係の深い怪異 【アニメ未登場】
深淵の者(クル)/宇宙人
宇宙人の一種ですが、地球が所属する銀河系ではない、遥かかなたの外宇宙からやってきたと考えられています。タコのような見た目をしており、タコ型の火星人と、ラヴクラフトによる架空の神話・クトゥルフ神話がモチーフになっていると考えられます。
ハスターのキャラクター名はクトゥルフ神話の邪心ハスター、それ以外のキャラクターには「タコ飯」「タコのカルパッチョ」「酢だこ」など、タコを使った料理の名前が付いています。
ナノスキン/SF
作中で全知全能の存在と言われる宇宙人・ルドリスが所有する、超高密度のナノマシンで構成されたブロックのこと。想像力によって形状や強度、デザインが変化するなど誰もが気軽に使用できる一方、意のままに使いこなすにはかなり細やかなイメージが必要となります。本編においては、オカルンやモモの同級生・坂田金太がこれを使用し、特撮やSFアニメさながらの巨大ロボットを構成してメカアクションを繰り広げています。
カシマレイコ/日本の都市伝説
「カシマレイコ」、「口裂け女」、「八尺様」の要素をミックスした、『ダンダダン』作中最強クラスの怪異です。
「カシマレイコ(別名・カシマさん、仮死魔霊子など)」は、過去に起きた悲惨な事件の話を知った者に電話や夢で問いかけを行い、正しく答えられなかった場合に体の一部を奪うと言われています。また、鹿島大明神・鹿島神社に関係があるという派生では、「カシマさん。助けてください」と唱えると脅威が去るといいます。
「口裂け女」は日本で1980年代に発生・社会問題にまで発生した都市伝説。大きなマスクをした若い女性に「ねえ、私きれい?」と尋ねられ、「きれい」と答えるとマスクを外し、「これでも?」と耳まで裂けた口を見せてくる怪異です。日本では非常にポピュラーな都市伝説で、様々な作品に「口裂け女」をもとにしたキャラクターや逸話が登場します。
「八尺様」は、「2ちゃんねる」に投稿された話から生まれた都市伝説。八尺(約2メートル40センチ)を超える大女で、魅入った人間(主に少年)を取り殺す怪異です。「ぽぽぽ」と奇妙な笑い声を発すると言われています。若い女や老婆などに姿を変えるほか、身近な人間の声を真似て魅入った人間をおびき出すこともあるそうです。
オンブスマン(子泣き爺)/日本の妖怪
作中では「オンブスマン」と呼ばれています。成仏しきれなかった幼い子供の霊で、愛情を求めて人の背中におぶさってくる妖怪です。愛をもって接すれば成仏するものの、遠ざけようとすると取り憑いた人間を潰してしまいます。
また、元ネタの子泣き爺は、本来は老人の姿でありながら、夜道で赤ん坊のような泣き声をあげる妖怪。かわいそうに思った通行人が抱き上げると次第に体重が増え、石のように重くなって押しつぶされると言われています。徳島県などに伝わっていますが、目撃談は少なく、赤ん坊の声で泣く妖怪、抱き上げると重くなる妖怪などが組み合わさって生まれた存在だと考えられています。
アンブレボーイ(唐傘お化け)/日本の妖怪
作中では「アンブレボーイ」と呼ばれています。日本の付喪神(※長い年月を経て、道具などに魂が宿ったもの)のひとつで、一つ目・一本足に下駄・長い舌がトレードマーク。役目を終え、人に捨てられた唐傘が恨みによって妖怪になったものですが、直接的な危害の少なさ、ユーモラスなビジュアルから、親しみやすい妖怪として愛されています。
呪行李(のろいごうり)/日本の怪談・伝承
竹や木の皮で編んだ箱形の収納具・行李(ごうり)に、持ち主の怨念やネガティブな感情が宿ったもの。行李を手に入れた人に不幸が訪れるとされています。また、捨てたり燃やしたりしても呪いが解けないと言われており、お祓いなどの対処が必要です。
サンジェルマン伯爵/世界の都市伝説
18世紀のヨーロッパを中心に活躍したとされる人物で、主に錬金術師・音楽家として知られています。様々な伝説と逸話を持つ人物であり、不老不死の象徴として神格化されました。また、死後も世界中で目撃情報が挙がっており、タイムトラベターなのではないかという都市伝説も生まれ、現在も謎の人物としてオカルトファンの注目を集めています。
小人/世界の都市伝説・伝承
人間が寝ている間にいたずらやお手伝いをする小人の伝承は世界中にありますが、『ダンダダン』に登場するのは、日本の都市伝説である「小さいおじさん」が元ネタだと考えられます。テレビのバラエティ番組で芸能人が「おじさんの姿をした小さい妖精を見た」と語ることが多く、コミカルな妖精として知られています。
地底人/SF
名前の通り、地底に住む生命体のことを指します。SF作品では、地底で独自の文明を築いた存在、または天変地異を逃れた人類として描かれていますが、『ダンダダン』においては数百年の寿命を持ち、宇宙空間でも活動できる生命体となっています。
蠅の王/世界の神話
聖書に登場する異教神、または悪魔のベルゼバブを指します。『ダンダダン』においては、小さな生き物を従わせる能力として描かれています。
まとめ
『ダンダダン』に登場する怪異やUMAについて紹介してきました。
日本の怪異から世界のUMAや伝承まで幅広く登場するのに加え、日本・海外の俳優やアーティスト、芸人など様々な小ネタが盛り込まれているため、今後登場するキャラクター達にも期待が高まりますね。