天石立神社について
奈良県奈良市の山あいにある天石立神社は、建物の本殿を持たない神社です。日本の神社には通常、神を祀るための社殿がありますが、ここでは森の中にそびえる巨石そのものを神聖な存在として崇めています。古代の自然信仰の姿を今に伝える、静謐な場所です。
日本神話と結びついた巨石

Itto-seki
天石立神社の御神体、つまり神が宿るとされる神聖な対象は、高さ数メートルにおよぶ巨大な岩です。この岩は、日本神話の中でもとりわけ有名な「天岩戸」の伝説と深く結びついています。
神話によると、太陽の神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)が岩でできた洞窟に隠れてしまい、世界は暗闇に包まれました。困り果てた八百万の神々(日本では自然のあらゆるものに神が宿ると考えられており、その数は無数にのぼります)は知恵を絞り、芸能の女神・天宇受賣命(あめのうずめ)が岩戸の前で踊りを披露。外の賑やかさを不思議に思った天照が顔を覗かせた瞬間、怪力の神・手力男命(あめのたぢからおのかみ)が岩戸をこじ開け、世界に光が戻りました。
天石立神社の巨石は、このとき手力男命が投げ飛ばした岩戸の扉そのものだと伝えられています。周囲にも大きな岩が点在し、それぞれに神が宿っているとされています。
剣豪・柳生一族の修練場

この神社の周辺は、16世紀から17世紀にかけて名を馳せた剣術一族・柳生家の修練の地でもあります。柳生家は「柳生新陰流」という剣術の流派を確立し、やがて江戸幕府の将軍に剣を教える師範役を務めるまでになりました。
一族の祖である柳生宗厳(石舟斎)にまつわる逸話が残っています。宗厳は3年にわたって毎夜この地で天狗(長い鼻と翼を持ち、山に棲むとされる日本の伝説上の存在)を相手に剣の修業を重ねました。ある夜、天狗を一刀のもとに斬り伏せたと思い足元を見ると、そこには真っ二つに割れた巨大な岩があったと伝えられています。この岩は「一刀石」と呼ばれ、神社から50メートルほど奥に今も残っています。
『鬼滅の刃』ファンの巡礼スポット
一刀石は、漫画・アニメ『鬼滅の刃』の聖地巡礼スポットにもなっています。この作品は人を喰う鬼に家族を奪われた少年が鬼と戦う力を身につけていく物語で、2019年のアニメ化を機に世界中で社会現象となった作品。
物語の序盤、主人公の竈門炭治郎は天狗のお面をかぶった師匠・鱗滝左近次のもとで修行に励み、その仕上げとして人の背丈を超える巨大な岩を刀で両断します。
この岩の姿が一刀石によく似ていること、さらに天狗を相手に修業した石舟斎の伝説とイメージが重なり、ファンの間で巡礼スポットとなりました。
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