

神社やお寺を訪れる時のマナーや手順
Etiquette When Visiting Shrines and Temples
日本の観光地として人気の高い寺社仏閣。神社とお寺で何が違うのか、どのように参拝したらいいのかなど、わからないことも多いと思います。そこで、お参りするときの手順、ちょっとした注意点などを簡単にご説明します。
神社とお寺の違い

厳島神社 / 浅草寺
簡単にいうと、神社とお寺では信仰対象が違います。神社は自然や土地神などを祀る日本古来の「神道」、仏教はインド発祥の「仏教」の宗教施設です。
建築様式にも違いがあり、神社は入口に鳥居、お寺は門があります。ただし、同じ敷地内に神社とお寺があるなど、完全に区別できない場合もあります。
一神教の方からすると、神社とお寺が並んで立っていたり、多くの日本人が両方に参拝することに違和感を覚えるかもしれません。しかし、日本では古くから「神仏習合」という文化が根付いていて、自然や祖先を神として崇めながらも、仏教にある死後の教えを取り込んできました。
現在の日本では、自身の宗教を強く意識する人は減っていますが、神道と仏教は風習として生活に根付いており、お宮参りなどは神社、お葬式やお墓参りはお寺で行うのが一般的です。
神社に参拝するときの手順
1. 鳥居の前で一礼
神社の前にある鳥居は、神々の領域と人間が住む場所を分ける結界といわれています。そのため、鳥居をくぐる際は帽子などを取り、神様への挨拶として一礼するのが好ましいといえます。ただし、お祭りや初詣などで人が多い場合は立ち止まると危険な場合もあるため、歩きながら軽く頭を下げるだけにとどめるなど、状況に応じて柔軟に行動してください。
- 鳥居の中央は神様の通り道といわれているため、左右どちらかに寄ってくぐりましょう。
- 参拝を終え、鳥居を出る際も、一度振り返って神様にお辞儀をするのがベターです。
2. 手水舎でお清め

Komagata Shrine / Sensoji Temple
2-1. 水を掬って左手を洗う
まずは右手で柄杓を持ってたっぷりと水を入れ、左手を洗います。水が溜まっている「水盆」ではなく、竹筒や龍の口を模した部分から出てくる水を汲みます。また、手を洗った水が盆に入らないよう気を付けましょう。
2-2. 持ち替えて右手を洗う
柄杓を左手に持ち替え、右手を洗います。
2-3. もう一度持ち替えて口をすすぐ
再び柄杓を右手に持ち、左手に水を注いで口をすすぎます。衛生面が気になる場合はすすぐ真似でもOKです。
直接柄杓に口を付けたり、音を立てて口をゆすいだりするのはご法度。また、口に入れた水は盆部分に吐かないよう注意しましょう。
2-4. 柄を清めて完了
最後に、柄杓を立てるように持ち、柄の部分を清めます。勢いよく立てると衣服が濡れる場合があるので、ゆっくりと動かしてくださいね。
3. 礼拝の手順と作法
明確な作法については諸説ありますが、今回は一般的な流れをご紹介します。神社によっては拝殿に手順が提示してある場合もあるので、その場合は書いてある内容に従いましょう。
3-1. お賽銭を入れる

Samukawa Shrine
拝殿に到着したら、賽銭箱にお賽銭を入れます。これは強制ではなく、金額によって願いが叶いやすくなるといった効果もありません。感謝の気持ちとして、無理のない金額を入れればOKです。
民間伝承のおまじないとして、「5円=ご縁がありますように」「11円=いい縁に恵まれる」など、語呂合わせで縁起を担ぐこともあります。仕事運や恋愛成就など、願いによって様々な語呂合わせがあるので、調べてみても良いでしょう。
3-2. 丁寧に鈴を鳴らす

Tsuyunoten Shrine
鈴がある場合は1~3回鳴らします。この鈴の音は、自分を祓い清めると同時に、神様への挨拶の役割を持っています。
呼び鈴やノックのようなイメージですから、力任せに大きな音を鳴らすのではなく、丁寧にご挨拶するつもりで鳴らしましょう。
3-3. 二礼二拍手一礼
神社本庁制作の作法手順です。日本語ですが、映像を見たり自動翻訳でも十分に理解できます。
- 姿勢を正し、二度礼をします。腰を90度に折る礼が一般的ですが、体調などに合わせて無理なく行えばOKです。
- 拍手を二回し、両手のひらを合わせたままお祈りします。「願掛け」や「祈願」ともいわれますが、神社やお寺は「神様・仏様への感謝を伝える場所」です。私利私欲のお願いを伝えて終わりではなく、まずは「自分の名前と住所」、自分がこれからどう行動・努力するかを表明し、感謝の気持ちと、見守っていてほしい旨を伝えましょう。これは口に出しても、心の中で唱えても問題ありません。
- 最後に改めて姿勢を正し、一礼します。
おみくじやお守り、御朱印は参拝後に
参拝が終わったら、おみくじやお守り、御朱印の拝受を行います。
悪いおみくじを境内に結ぶ方もいますが、神様からのアドバイスとして持ち帰っても問題ありません。また、境内に結ぶ場合は、必ず決められた場所に。
境内にある木や絵馬は神聖なものなので、おみくじを結ばないようにしてください。
お寺に参拝するときの手順
1. 門に向かって合掌と一礼

Ryuko Temple
入口にある門の前で、静かに手を合わせ、一礼します。俗世と神域を隔てる境界線でもあるので、門の下部にある横木(敷居)を踏まず、またいで入るのが好ましいです。
神社と違って、お寺では門や参道の中央を歩いてもマナー違反にはなりません。参拝を終えて出るときは再び合掌し、本堂に一礼します。
2. 手水舎でお清め

Komyo Temple / Kuzui Temple
2-1. 水を掬って左手を洗う
まずは右手で柄杓を持ってたっぷりと水を入れ、左手を洗います。水が溜まっている「水盆」ではなく、竹筒や龍の口を模した部分から出てくる水を汲みます。また、手を洗った水が盆に入らないよう気を付けましょう。
2-2. 持ち替えて右手を洗う
柄杓を左手に持ち替え、右手を洗います。
2-3. もう一度持ち替えて口をすすぐ
再び柄杓を右手に持ち、左手に水を注いで口をすすぎます。衛生面が気になる場合はすすぐ真似でもOKです。
直接柄杓に口を付けたり、音を立てて口をゆすいだりするのはご法度。また、口に入れた水は盆部分に吐かないよう注意しましょう。
3. 鐘を撞く

Hase Temple
お寺に鐘が設置されており、許可されている場合は鳴らすことができます。
※ お寺から出るときの鐘は「出鐘」「戻鐘」と呼ばれ、死者を送るときのものとされています。縁起が悪いため、必ず参拝前に撞くようにしましょう。
4. お線香を焚く

Sensoji Temple
お線香がある場合や購入した場合は、設置されているロウソクで火をつけて香炉に供えます。
手で扇ぐようにして火を消し、真ん中付近、または空いているエリアにさしてお供えします。思ったよりも勢いよく燃えることがありますが、息を吹きかけるのはマナー違反ですよ。
常に煙が立っている「常香炉」においては、煙を具合の悪い部分、痛い部分に浴びるとよいともいわれており、参拝する方が煙を浴びていることも。頭に煙をかけると賢くなると言われており、頭の部分に浴びている人が多く見られます。
5. 礼拝の手順やルール
5-1. お賽銭を入れる

Shinshoji Temple
本堂に到着したら、賽銭箱にお賽銭を入れます。これは強制ではなく、金額によって願いが叶いやすくなるといった効果もありません。感謝の気持ちとして、無理のない金額を入れればOKです。
また、「5円=ご縁がありますように」「11円=いい縁に恵まれる」など、語呂合わせで縁起を担ぐのが一般的です。仕事運や恋愛成就など、願いによって様々な語呂合わせがあるので、調べてみるのもおすすめです。
5-2. 鰐口や鈴を鳴らす

Kiyomizu Temple
鰐口(お堂の前に吊り下げられた小さな銅鑼のような仏具)または鈴を鳴らします。
神様は鈴で呼ばれないといらっしゃらないと言われているため鈴が設置してありますが、仏様は千里眼を持っていると言われており、鈴や鰐口がない場合もあります。
設置されている場合は、神社と同じく丁寧に鳴らし、仏様にご挨拶をしましょう。
5-3. 手を合わせる

お寺では一礼した後静かに合掌するのみで拍手はしないことが多いです。ただし、宗派によるため、周りの様子を見て合わせると安心です。お寺によっては本堂の横などにお経が書いてあることもあり、合掌しながら唱えるとよいとされています。
5-4. 祈願、お焼香
神社と同じく、お祈りの際は私利私欲のお願いを伝えて終わりではいけません。「自分の名前と住所」、自分がこれからどう行動・努力するかを表明し、感謝の気持ちと、見守っていてほしい旨を伝えましょう。これは口に出しても、心の中で唱えても問題ありません。
また、お焼香をする場所がある際は、合掌後に行います。右手で抹香をつまみ、顔の前まで持ち上げてからおろし、左手を添えて香炉に供えましょう。その後、再び合掌して一礼します。
おみくじやお守り、御朱印は参拝後に
参拝が終わったら、おみくじやお守り、御朱印の拝受を行います。
悪いおみくじを境内に結ぶ方もいますが、神様からのアドバイスとして持ち帰っても問題ありません。
手順を間違えるとどうなる?

The Great Buddha of Tokyo
神様や仏様を敬う気持ちがあれば、多少の間違いは問題ありません。実際、「参拝の仕方」と検索すると手順や拍手の回数などは諸説あります。
最初に説明したように、日本では古くから「神仏習合」という文化が根付いているため、参拝方法が混ざってしまったとしても、怒られることはめったにないでしょう。もちろん、手順を間違えると罰が当たるなんてこともありません。
不安な場合は、神社やお寺にいる宮司さんやお坊さんに質問したり、周囲の人を真似したりすれば大丈夫です。
現地でトラブルを防ぐために

神聖な場所ですから、ある程度落ち着いた、露出度の低い服装で参拝するのが望ましいです。自身の信仰する宗教の施設に行く時と同じようなフォーマルさを意識しましょう。
参拝に堅苦しいルールはなく、信仰に関係なく詣でることができますが、大声で騒がない、走り回らないといったマナーは大切です。
神様や仏様、日本文化やそこで働く人々を軽んじる、寺社仏閣の建物や境内にあるものをふざけて傷付ける、境内を遊び場扱いするといった行為はトラブルや事件に発展する可能性があるため控えてください。
日本人の宗教観

万九千神社
日本人の多くは自身の宗教や信仰に強いこだわりを持っていないように見えますが、一方で「八百万の神」という概念が生活に根付いています。これは、山や川、木や動物、長年大切にされてきた物やお米の一粒に至るまで、あらゆるものに神や魂が宿ると考えるものです。
そのため、いたずらに自然や物を傷付けたり、粗末にする行為は非常に罰当たりと捉えられます。例えば「動画配信や写真撮影のために、境内の木に生えている邪魔な枝や葉を少し折ってもいいだろう」「お金を出して購入したのだから、お守りや御朱印はどう扱ってもいい」と軽い気持ちで行動・発信すると、想像をはるかに超える反発やバッシングを受ける可能性が高いです。
寺社仏閣は人気観光地であるとともに信仰対象であることをきちんと理解し、境内にあるもの、神社やお寺で授かったものは大切に扱うようにしましょう。