日本の伝統文化

男性向けの着物について種類を紹介、場面に応じた礼装から普段着まで

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Sana Yoshida

男性向けの着物について種類を紹介、場面に応じた礼装から普段着まで

日本の伝統的な衣服である「着物」。洋服のように体のラインに沿った裁断や縫製ではなく、一枚の反物を直線断ち・直線縫いで仕上げているため、体型に左右されにくく誰でも着られるのが大きな特徴です。

多くの和服店で着物のレンタルを行っており、海外からの観光客はもちろん、着物を着る機会のない若い人にも人気なんですよ。「着てみたい!」という方に向けて、男性の着物の種類や特徴をご紹介します。

着物の種類

男性向けの着物は、大きく分けて「礼装」「準礼装・略礼装」「外出着・洒落着」「普段着」に分かれています。まずはそれぞれの特徴から見ていきましょう。

礼装

儀式や式典などで着る、フォーマルな着物を指します。分かりやすい場面で言うと「結婚式」や「お葬式」ですね。

スーツやドレスでランクに合わせたデザインがあるように、着物においてもランクがあり、男性であれば「紋付羽織袴」が正礼装となっています。また、めでたい席では華やかな色と柄の着物を選びますが、お葬式で着物を着用する場合、男性は黒色の紋付き袴、または暗い色の袴や訪問着が基本です。

紋付羽織袴

a man in a black kimono is standing with his arms crossed

男性物の着物における正礼装がこの「紋付羽織袴」。

「紋付(Mon-Tsuki)」の紋とは「家紋(Ka-Mon)」のこと。かつては公家(貴族)や武士の家柄を示すもので、家ごとに異なるデザインが用いられています。有名なところで言うと、皇室の「菊花紋章」、500円硬貨にも描かれている桐をモチーフにした「桐紋」、徳川家で使われている「葵紋」などがあります。

また、紋を入れる位置ごとに意味があり、背中はご先祖様、胸の部分は両親、袖は兄弟・姉妹・親戚を表します。すべてに紋を入れた「五つ紋」が最上格となります。五つ紋であれば色紋付も黒紋付と同格、背中と両袖のみの三つ紋や背中だけの一つ紋の場合は準礼装・略礼装となります。

「家紋」が無い時はどうする?

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正しい「家紋」の入った紋付羽織を着用するのは、基本的にその家系であることがマナーです。

とは言え正式な「家紋」がある家は日本でも少数派。使える家紋が無い時や、レンタルする時は「通紋(Tsu-Mon/Tori-Mon)」と呼ばれる紋が入った羽織を使います。

これは、江戸時代に広く普及した紋を使用しており、家系に関わらず誰でも身に着けることができます。

喪服

通夜や葬儀、法事の際に着用する礼装です。喪主や世話役代表、2~3親等までの親族が着用するのが、五つの紋が入った「正喪服」。喪主以外の遺族などが着用できるのが三または一つ紋付きの寒色系の着物である「準喪服」、弔問客などが着用する三または一つ紋付きの寒色系の着物である「略喪服」があります。

ただし、現代では葬儀や法事の場で着物を着る人はほとんどいません。着物を着ているだけで格が高いと思われる場合があるため、喪主や遺族が洋装の場合は略喪服であっても着用を避けたほうが無難です。

準礼装・略礼装

披露宴やお茶会、パーティーなどの場では、準礼装や略礼装でOKです。

色紋付羽織袴

黒以外の着物と羽織、袴で構成された男性向けの着物です。三つ紋または一つ紋の紋付き袴は、礼装よりもカジュアルに着ることができます。

白やグレー、茶色、紺色など、シックな色が中心です。

紋付羽織・羽織

気軽なパーティーであれば、袴は付けず、一つ紋または紋なしの羽織でも問題ありません。

茶席

お茶席においては、羽織は着ず、袴をつけるスタイルが主流です。落ち着いた色合いかつ無地の着物に、同じく無地か縞の袴をつけます。

外出着・洒落着

着物+紋のない羽織が基本です。また、動くことが多く着崩れが気になる場合は無地袴を着用します。礼装よりも自由度が高いため、半衿やシャツとの組み合わせなど、コーディネートを自由に楽しみましょう。

お召(おめし)

先に染めた糸で織りあげた布を使った着物は「お召」と呼ばれています。「高貴な方がお召しになる」ことからこの名がついており、フォーマルな着物に使用されることが多いです。男性の場合は、準礼装として使用することもできます。

普段着

普段の生活やちょっとした外出の際に着るもので、手入れや保存がしやすい着物です。

紬(つむぎ)

織の着物で、節(ふし)のある糸で織った先染めの織物です。基本的に普段着、外出着に用いられるため、高価な紬であっても茶会や結婚式の場には不向きと言われています。

絣(かすり)

絣糸を縦と横に交差させて織る着物です。

ウール

羊毛で作った着物は、保温性と保湿性があるため温かさが特徴。厚手の生地が多く、初秋~春先に着られます。

木綿

綿糸を織った着物で、やわらかい手触りが特徴です。夏は涼しく、冬は暖かく着られるため、1年を通して着用されます。

ポリエステル

最も安価で、洗濯しても乾きやすく手入れも楽なため、初心者にオススメの生地です。

デニム

最近では、若い人を中心にデニム着物の人気も高まっています。カジュアルでユニセックスなこと、スニーカーやブーツとの組み合わせもしやすいことから、洋服のように着られる着物として注目を浴びています。

その他

浴衣 (ゆかた)

着物よりも手軽な夏の衣服として日本に根差しています。温泉宿などの館内着となっていることも多く、リラックスしてくつろぐのに適しています。

「浴衣」は男女ともに着用できますが、男性ならこの後に紹介する「甚平」も風流で素敵ですよ。

甚平 (じんべい) / 作務衣 (さむえ)

くつろぎ着や作業着として着用する男性向けの着物の一種です。

甚平は夏に浴衣替わりの服として着られることもあります。作務衣は袖が長めで長ズボンのため、料理人や陶芸家、住職などの制服として着られることもあります。

比較的着崩れしにくいので、成人男性だけでなく子どもに着せるのにもおすすめです。

場面に応じて使い分けるのが"お洒落"

一口に「着物」と言っても様々な種類があり、TPOに合わせて着用されていることをご紹介してきました。呉服店の着物体験、施設のイベントなどで実際に着てみることができますから、興味がある方はぜひ調べてみてくださいね。

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